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平和な日常~冬~6

さて節分が終わると街はバレンタイン一色になり麻帆良学園でもその手の話で持ちきりになる。

もちろん女子中等部でもそれは例外ではなく、女子校ではあるものの男子中等部を始め男性との関わりが多いだけにその手の話が絶えなかった。


「バレンタイン? 何にもやらんぞ。 だいたいバレンタインってのは日本のお菓子屋の企画なんだ。 喫茶店には関係ない。」

当然横島の店でもバレンタインを仕事としてどうするかという話になるが、横島は微妙に嫌そうな表情をして全く何もやらないと言い切る。


「チョコレートが欲しいという問い合わせが結構来てるですが。」

木乃香達の元にはすでにバレンタインに関する問い合わせが来てるようであったが、何もやらないと言う横島に木乃香達はまた何か嫌な思い出でも拗らせたのかと少し困った表情をしていた。

最近では横島が女性が苦手だというのがどうも微妙に違うらしいとようやく理解して来た少女達であるが、それでも女性関係に変なトラウマというかコンプレックスがあることは隠しようがない事実である。


「ん? みんながどうしてもって言うなら別に売ってもいいけどさ。」

そもそも横島が語るモテたことがない過去がかなり怪しいのは周囲も当然気付いていて、冗談のような誤解を解かないままにすればどうなるかを改めて見せつけられた形だった。

まあ横島も一応大人なので木乃香達が困った表情をしてると、バレンタインにチョコレートを売ることを考えるとは言うもののあまり乗り気でないのは明らかである。



「横島さんも相変わらずやわ。」

そしてそんな話をした日の夜になると、女子寮の木乃香と明日菜の部屋には夕映とのどかに美砂達三人とあやかと千鶴とついでに夏美が集まっていた。

横島がバレンタインにもトラウマがあるらしいとの話がすぐに伝わったメンバーが集まっていたのだが、正直どうしようかと困った表情をするばかりだった。


「この前インフルエンザの時にちょっと聞いたんだけど横島さんって小学校の時にイケメンの友達が居て、クラスメートの女子ばかりか先生からも露骨に扱いが違ったんだって。 話を聞く限りだといじめって感じじゃなく、何でも言える友達みたいな感じらしいんだけど。」

「それが原因かもしれないですね。」

はっきり言えば被害妄想に近いのかもしれないが、横島の女性に対する認識や感覚はかなりズレていると全員がしみじみと感じる。

そんな時明日菜が先日のインフルエンザの時に聞いた小学校時代の話をすると、少女達はそれが原因かもしれないとほぼ確信していた。


「そもそもさ、小学校の頃なんかだと本当に嫌いな人とは口もきかないわよね。 そこんとこ全く理解してないのよね、マスターって。」

「うんうん。」

ぶっちゃけ三十過ぎのいい大人が小学校時代のトラウマでひねくれてる現状は馬鹿じゃないのと思うものの、長所と短所は誰にでもあり横島がそれが目立つのはみんなが理解している。

しかも横島は困ったことに女性の気持ちにはかなりのお馬鹿さんなのである。

加えて根本的に嫌いな相手とは女性は口もきかないことを理解してないと美砂が語ると、少女達は全くだと頷き横島は本当に嫌われたことがないのではとも思ってしまう。


「でもさ、私は実は気持ちが分からなくもないのよね。 私もバカだとかバカレッドとか散々言われてたけど、正直嬉しくはなかったわよ。 今だから言えるけどね。 もし私もあのまま大人になってたらって思うと特にね。」

女性の気持ちが理解出来ないと言うのは簡単だが、ここで意外なことに明日菜が横島の気持ちを理解出来ると語り今までは言えなかった本音を口にする。


「アスナさん……。」

それはクラス委員として長い付き合いのあやかにとって耳が痛い話だった。

互いにケンカをしてよく相手の悪口を言い合っていた二人なので二人の間では対等ではあったが、クラスで明日菜が馬鹿だと言われ始めた原因はあやかとの喧嘩にもあったのだ。

それにお気楽な少女達が乗ってしまい、いつの間にかクラスではバカレッドと言われていたのだからあやかにも多少自覚はあったのだろう。




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