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平和な日常~冬~5

次の日は東西協力の交渉担当者達の食事会の日であった。

名目上の目的は近右衛門による慰労であるが本音では交渉をよりスムーズに進めたいとの意向もあり、意外にもこの食事会は重要だったりする。

メニューに関しては任されているが依頼が前日だったこともあり、横島は昨日一日ずっと頭を悩ませていた。

料理一つで交渉が滞るとは横島もあまり思わないが、メニューによっては近右衛門の本音を邪推されることになりかねない。

これが外交的な食事会ならばフランス料理という手もあったのだが、白人の魔法使いにより分断された魔法協会の話し合いの食事会に白人の料理はどう考えても相応しくない。

ただ和食となると出汁から調味料まで関東風と関西風があり、どちらを使うかがまた難しくなる。


「それでこんなメニューになったんやね。」

夕方になり店を早めに閉めた横島は仕込み済の一部食材を持ち、木乃香達と近衛邸に向かうが説明したメニューに木乃香達は横島も悩んだんだろうと少し同情気味に笑っていた。

というのもこの日の料理は北は北海道のイカめしに始まり南は沖縄のゴーヤチャンプルーなど、いわゆる代表的な地方の郷土料理を作ることにしている。


「学園長先生も出来るだけ中立で進めたいみたいだしな。 そもそも東だ西だと争ってるのも外から見ると権力争いにしか見えんし。 末端や地方の人間からするとあんまりいい印象はないだろうからさ。」

今回はあえて関東と関西の郷土料理をメニューから外していて、バイキングというか大皿に盛り付けてそれぞれが好きな料理を選んで食べるようにするらしい。

横島自身は近右衛門の努力には頭が下がる思いであるものの、元々権力者や組織にはあまりいい思い出がない。

東西の魔法協会に関しても末端や地方の苦労を上層部がどこまで理解してるかは疑問がある。


そもそもの問題として東西の魔法協会の敵は何もメガロメセンブリアだけではない。

一例を上げれば日本の近隣には反日国家が存在し、反日国家の魔法協会は当然ながら日本の魔法協会の味方ではないのだ。

まあ魔法協会は国家ではないので味方ではない魔法協会とは交流すらないことが多いが。

ただ影に日向に足を引っ張ることは良くあるし隣国である半島の南側の国家の魔法協会なんかは親メガロの魔法協会として有名で、メガロメセンブリアにて関東と関西の両魔法協会を批判するロビー活動に熱心だ。

日本国内でも魔法協会に所属しないはぐれ魔法使いなんかには東西の争いは半ば呆れられているのが実情であり、正直なところ協力すら最近までしなかったことは近右衛門の対外的な評価を下げている原因でもあった。


「普通に仲良くしたらいいのに。」

「それが出来ないから苦労してるんだろうな。 人間三人集まれば派閥が出来るっていうし。 日本は島国だから昔っから内部で争うのが好きなんだよ。」

木乃香や夕映やのどかはまだ魔法協会の苦労というか協力する難しさを察しているようだが、タマモは元よりさよと明日菜も同じ日本の魔法協会が対立してることをおかしいと考えてるらしい。

さよなんかは口に出して普通に仲良くしたらいいと言うが、横島はそれが一番難しいのを神魔戦争の頃なんかの実体験を踏まえて嫌というほど理解している。

横島の場合は高校卒業と共に妙神山に行き事実上人間社会から抜けたのでほとんど他人事であったが、神魔の争いが霊的な環境の悪化という間接的な影響で天変地異や異常気象などとして頻発すると世界は弱肉強食の時代に入り日本でも混乱に混乱を重ねていた。

極論を言えば人は争い競う生き物であり、自分の地位や利益を他人に仲良くしたいからという理由だけで分け与えるなどまず出来ないのだ。

正直なところ横島は土偶羅が居るので協力はしているが、一人だったら本当に木乃香達が困るギリギリまでは絶対に関わらなかっただろう。


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