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平和な日常~冬~2

「貴女達が気にする必要はないわ。 同じ日本人同士で争うのを止めるのには必要な経費よ」

「そうじゃな。 この先どうなるか分からんが、魔法協会は一つに纏まらねばならん。 ただでさえ向こうの連中に目の敵にされてるからのう」

二つに別れた魔法協会を一つにと言うのは、日本の魔法関係者に共通する理想の一つだと言っていい。

この先も二つの世界が永遠に平和だと安易に考える者は少なくとも魔法関係者では少ない。

二つに別れた魔法協会を今一つに纏めなければ、またいつか二つの魔法協会は争うことになるとの危機感は多かった。

ただ理想を実現するには気の遠くなるような時間と苦労が必要なのだが。


「今回の本題は木乃香と明日菜ちゃんの今後についてです」

その後も挨拶に続き近況などを互いに話して時間が過ぎると、穂乃香はいよいよ本題について口を開いた。

最早秘密を隠したままで木乃香達を守るのは、万が一の時に手遅れになるのではないかと穂乃香は語っていく。

現状で一番の脅威は当然ながらルールもなくやりたい放題である完全なる世界の連中であるが、彼らに対して有効な防衛方法がないのがネックになっていた。


「少し早い気もするが、後手に回るよりはいいかもしれんのう」

木乃香達へ魔法の存在を教えることには、その場に居る者達も複雑そうな表情を見せる。

明日菜の扱いは当然難しいが木乃香もまた魔法協会の後継者問題が絡むので、理想としては木乃香がもう少し大人になり二つの魔法協会の統合の件がもっと進んだ後が理想なのだ。


「それに五年前のウェールズの一件もありますから」

そんな木乃香達へ魔法の存在を教えようと考えていると語る穂乃香に、清十郎達はすぐに答えが出て来なかった。

ただ穂乃香はもう一つの気になる件として五年前にウェールズの村を大量の魔族が襲った件を口にする。


「あの一件か……」

「確か首謀者は不明のままだが、可能性が高いのは向こうの元老院のはずだろう?」

「ええ、でも完全なる世界が当時から健在だったとしたら?」

五年前にネギの故郷の村を壊滅に追い込んだ魔族の襲撃には首謀者がいるだろうとは、地球側の魔法協会関係者は皆気付いていることだった。

メガロ側ではあれは完全なる世界の残党の仕業だと断定したが、手口や前後の影響力から見てメガロメセンブリア元老院の仕業ではとの疑念も強く残っている。

関東魔法協会ではあの件をメガロの仕業だとほぼ断定していたが、当時に完全なる世界が生き残っていた可能性が浮上するとまた議論が降り出しに戻ってしまう。


「今でも連中と繋がる元老院議院が残っていると言いたいのか?」

「可能性は低くはないと思うわよ」

清十郎と千鶴子が無言になる中で若い二人と穂乃香の会話が続くが、穂乃香は完全なる世界とメガロメセンブリアの一部が今だに繋がってるのではとの可能性に言及する。

関東魔法協会として最悪のシナリオは、完全なる世界の麻帆良襲撃をメガロ側が利用することだった。

元々二十年前の魔法世界の戦争関連もその手口であり、穂乃香はウェールズの村を襲った魔族を召喚したのが完全なる世界で、彼らに情報を流したりしてそれを利用したのがメガロではと考えていた。


「この件に関しては高畑君を交えて皆で集まって徹底的に話す必要があるか」

そのまま話は日が暮れるまで続くがやはり論が出るまでには至らず、結果としては高畑などの関係者を加えてきちんと話す場を設けるべきだとの意見で纏まる。

そして穂乃香はその話し合いの前に横島にも根回しをして、可能ならば横島も加えるべきだと考えを巡らせていった。

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