平和な日常~冬~
その後豪徳寺達がたい焼きを食べ終える頃になると、店には雨に濡れたビッケとクッキがやってくる。
本来ならばタマモの散歩の時間であり二匹も一緒散歩に行く為に来たのだが、朝から雨が降り続いてるので流石に今日の散歩は無理だった。
「全く、お前ら風邪ひくだろうが」
ビッケとクッキの住む女子寮から横島の店までは二匹にとって通い慣れた道だったが、流石に今日は水溜まりなどがあり全身びしょびしょである。
横島とタマモは二匹が風邪を引かないように慌ててタオルでふいてあげるが、二匹は遊んで貰えると勘違いしたのか嬉しそうに戯れ付く。
「あめのひのおさんぽは、おやすみなんだよ」
そんな二匹に対し横島は楽しそうに相手をして一緒遊び始めるが、タマモは雨の日は危ないから散歩は休みだと二匹に注意を始める。
それは何処か横島に注意する時の木乃香達のような雰囲気のタマモであり、二匹は少し反省したのかシュンとしてしまうがどうやら一緒に遊びたくて我慢出来なかったらしい。
「まあいいじゃんか。 今日は店の中で遊んでればいいよ」
子猫にお説教する子供の構図に店内に居合わせた客達は微笑ましそうな表情で見守る中、少し笑いを堪えるような横島がせっかく来たんだから店内で一緒に遊ぼうと言うと、横島とタマモ達はカウンターに近いボックス席に移動して一緒に遊び始める。
元々二匹は横島の店の最古参の常連であり、最近は店の常連のみならず寮から横島の店までの人々やタマモ達の散歩コースの人々には結構有名な猫になりつつあった。
まあそれには飼い主がタマモだと思われてると誤解も含まれているが。
ちなみにこの後すぐに学校帰りの桜子や茶々丸などの猫好きな者が偶然集まりタマモと一緒にビッケとクッキと遊ぶ姿が見られるが、残念ながら横島は中高生の客が増えた影響で忙しくなり始めたのですぐに一緒に遊べくなってしまうことになる。
「ああ、いいとこに来たな。 ちょっと頼みがあるんだわ」
そして中高生の客相手にたい焼きを再開した横島だったが、木乃香達と一緒に店にやって来たあやかと千鶴を見つけるとさっそくパーティーの手伝いの件を話してみた。
「お祖母様がそんなことを……」
千鶴は祖母が横島にまで頼んでいた事実を知ると少し驚いた表情を見せるが、別に嫌がってる様子ではない。
というか大企業の会長という立場上、千鶴子は安易に人に頼ったりする人物ではなかったので驚いただけである。
まあそれだけ木乃香の件を気にしてるのだろうとは思うが、それでも横島に頼んだのは千鶴にとっては少し意外であった。
(彼のような人を人たらしと言うんでしょうかね)
麻帆良に来てまだ一年も過ぎてないのに確実に存在感が増していく横島を、千鶴は一種の人たらしなのだろうとシミジミと思う。
何より千鶴自身が一緒に居ると居心地が良すぎて、ちょっと怖いと思わなくもない。
(優し過ぎるのも罪なんですよ。 横島さん)
いろいろ忙しい横島が自分のことを考えてくれたことを素直に嬉しく感じる千鶴だったが、その優しさをもっと求め甘えたくなる自分が居ることに苦笑いが出そうになってしまう。
見返りを求めぬ優しさは一種の理想ではあるが、人は綺麗事だけでは生きていけない。
横島の優しさが横島を苦しめる事態にだけはしてはいけないと、千鶴は心に刻み込むように思いつつパーティーの件を考えていく。
本来ならばタマモの散歩の時間であり二匹も一緒散歩に行く為に来たのだが、朝から雨が降り続いてるので流石に今日の散歩は無理だった。
「全く、お前ら風邪ひくだろうが」
ビッケとクッキの住む女子寮から横島の店までは二匹にとって通い慣れた道だったが、流石に今日は水溜まりなどがあり全身びしょびしょである。
横島とタマモは二匹が風邪を引かないように慌ててタオルでふいてあげるが、二匹は遊んで貰えると勘違いしたのか嬉しそうに戯れ付く。
「あめのひのおさんぽは、おやすみなんだよ」
そんな二匹に対し横島は楽しそうに相手をして一緒遊び始めるが、タマモは雨の日は危ないから散歩は休みだと二匹に注意を始める。
それは何処か横島に注意する時の木乃香達のような雰囲気のタマモであり、二匹は少し反省したのかシュンとしてしまうがどうやら一緒に遊びたくて我慢出来なかったらしい。
「まあいいじゃんか。 今日は店の中で遊んでればいいよ」
子猫にお説教する子供の構図に店内に居合わせた客達は微笑ましそうな表情で見守る中、少し笑いを堪えるような横島がせっかく来たんだから店内で一緒に遊ぼうと言うと、横島とタマモ達はカウンターに近いボックス席に移動して一緒に遊び始める。
元々二匹は横島の店の最古参の常連であり、最近は店の常連のみならず寮から横島の店までの人々やタマモ達の散歩コースの人々には結構有名な猫になりつつあった。
まあそれには飼い主がタマモだと思われてると誤解も含まれているが。
ちなみにこの後すぐに学校帰りの桜子や茶々丸などの猫好きな者が偶然集まりタマモと一緒にビッケとクッキと遊ぶ姿が見られるが、残念ながら横島は中高生の客が増えた影響で忙しくなり始めたのですぐに一緒に遊べくなってしまうことになる。
「ああ、いいとこに来たな。 ちょっと頼みがあるんだわ」
そして中高生の客相手にたい焼きを再開した横島だったが、木乃香達と一緒に店にやって来たあやかと千鶴を見つけるとさっそくパーティーの手伝いの件を話してみた。
「お祖母様がそんなことを……」
千鶴は祖母が横島にまで頼んでいた事実を知ると少し驚いた表情を見せるが、別に嫌がってる様子ではない。
というか大企業の会長という立場上、千鶴子は安易に人に頼ったりする人物ではなかったので驚いただけである。
まあそれだけ木乃香の件を気にしてるのだろうとは思うが、それでも横島に頼んだのは千鶴にとっては少し意外であった。
(彼のような人を人たらしと言うんでしょうかね)
麻帆良に来てまだ一年も過ぎてないのに確実に存在感が増していく横島を、千鶴は一種の人たらしなのだろうとシミジミと思う。
何より千鶴自身が一緒に居ると居心地が良すぎて、ちょっと怖いと思わなくもない。
(優し過ぎるのも罪なんですよ。 横島さん)
いろいろ忙しい横島が自分のことを考えてくれたことを素直に嬉しく感じる千鶴だったが、その優しさをもっと求め甘えたくなる自分が居ることに苦笑いが出そうになってしまう。
見返りを求めぬ優しさは一種の理想ではあるが、人は綺麗事だけでは生きていけない。
横島の優しさが横島を苦しめる事態にだけはしてはいけないと、千鶴は心に刻み込むように思いつつパーティーの件を考えていく。