平和な日常~春~

「では皆さん食べながら話を始めましょうか」

微妙な空気が漂う店内だったが、あやかはその場を仕切り話を始めていく

せっかくだからとそれぞれが鍋を食べ始めるのだが……


「美味しいですね。 関西風のおダシがいいです」

最初に口を開いたのは五月だった

京風の上品なダシの味が広がる寄せ鍋なのである

見た目は普通の寄せ鍋なのだが、味は驚くほど上品だった


「味付けは木乃香ちゃんがやったんだ。 本当にいいセンスしてるよ」

その味に驚き横島に視線が集まるが、実は味付けは木乃香がしていたらしい

流石にダシを取るのは横島がやったが、味付けは木乃香の実家の味だと言うと雪広グループの関係者以外は納得したような表情になる

普段は庶民的な木乃香だったが、やはり学園長の孫なのだと改めて実感したようだ


「美味しいわ~ 夏美ちゃんも連れて来ればよかったわ」

「このつみれは絶品ですね。 何か特別な隠し味でも?」

その後、一同は話し合いそっちのけで普通の食事会になってしまう

千鶴が同室の夏美も連れてくればよかったかと言ったかと思えば、五月は鍋の具の鶏肉のつみれに興味を示して尋ねている

そんな風に和やかな食事会になるが、雪広グループ関係者だけは困惑気味だった

2ーAの生徒は割と軽いので美味しい料理を普通に楽しんでるが、彼らは仕事が気になるらしい


「あの……、お嬢様」

30分ほど和やかな食事会は続く中、雪広グループの関係者の中で年長の中年男性がそろそろいいかと話を切り出す


「そうですね。 食べながらで申し訳ありませんが、お願いします」

どうやらあやかも話し合いをしなければいけない事は気付いていたらしく、まだ食べてる者がいる中で悪いがと担当者に説明を始めさせる


和やかなな食事をしていた一同だったが、担当者が説明を始めると真剣に話を聞き始めた

流石にこの場で脱線するほど賑やかな者は居ないらしい



担当者の話はレストラン予定地の説明から始まり予定規模など説明していくが、予定地はやはり一等地だった

場所は大学部などがある辺りで、数年前まで古い校舎があった広い跡地を雪広グループが近年麻帆良祭で借りてるようだ

その雪広グループの企業スペースの中核を担うのがレストランだった

他にも企業の製品の展示即売会場や遊べるアトラクションなんかも予定してるらしい


「席に関しては二十五テーブルで百席を予定しております。 食材に関しては提携農家からの野菜や自社農場の畜産製品などを予定しておりますが、別途必要な食材に関しては仕入れが可能です」

資料を配布して細かな説明をしていく担当者だったが、雪広グループ側で使用して欲しい食材は予想以上に多かった

中には提携企業の食品なんかもあり、正直全部使う方が大変かもしれない

まあ雪広グループ側も全品使うとは思ってないが、レストランで食材を宣伝しつつ販売に繋げたい思惑はあるようだ


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