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平和な日常~冬~2

次の日はいよいよパーティー当日であるが、横島は早朝から木乃香とのどかと一緒に新堂の店でスイーツ作りの予定である。


「明日菜ちゃん達の言うことよく聞くんだぞ」

いつもと違いこの日は店を完全に休むので珍しく二階のリビングで朝食にする横島達であったが、今朝の朝食は純和風のご飯とみそ汁に自家製のぬか漬と焼き魚だけだった。

今日はお昼からはパーティーで美味しい物を食べ放題なので、今朝は少し質素にしたらしい。

まあ栄養バランスを考えねばならないメンバーは居ないので、あくまでも横島の気分の問題だったが。


「うん」

横島は朝食を食べたらすぐに出掛けてしまうので朝食の席で今日のことを話していくが、さよも茶道部の集合時間に合わせて九時には出掛けてしまうのでタマモは早めに明日菜達に預ける予定である。

本当は横島宅にはハニワ兵が居るのでタマモはお昼に集合でもよかったのだが、明日菜達がタマモ一人では心配だし着替えなどの準備も出来ないだろうからと声をかけてくれていたのだ。


「きょうはさよちゃんはきものなんだよね! わたしたのしみ」

本格的なパーティーが未経験のタマモに対して今日は明日菜達の言うことを聞くようにと告げる横島だが、正直さほど心配する様子もなく明日菜達に任せて大丈夫だろうと楽観的だった。

対してタマモ本人は、今日さよが着物を着て木乃香の手伝いをすると聞いて楽しみで仕方ないらしい。

ちなみに着物自体は茶道部が纏めて借りるらしく、着付けも出来る生徒が何人か居るので問題ないようだ。


「私本格的な着物なんて初めてですし、ドジったらどうしようかと不安で……」

「だいじょうぶだよ!」

「そうだな。 リラックスしていつも通りにやれば大丈夫だよ」

そして今日一番緊張してるのは何故かさよであった。

浴衣は夏祭りの時に着たが本格的な着物は当然初めてであり、元々自分がドジなのを理解してるさよは不安げである。

タマモと横島はそんなさよを励まし元気付けていくが、タマモ同様に初めてのパーティーであることも含めて緊張する要素が多いらしい。


「楽しめばいいって。 ちょっとくらいドジ踏んでも笑って場を和ませるくらいだよ」

今までさよは常に楽天的な性格だったが、最近は月日を重ねるごとに喜怒哀楽の変化が以前よりも出始めていた。

横島はさよを元気付けながらもその変化に感慨深いものを感じる。

元々一般的な幽霊の中でもどちらかと言えば幽霊としての才能がなかった部類に入るさよが、今では思考能力の向上や記憶の鮮明化などかなり成長していた。

以前は深く考えられなかったので楽天的で済んでいたが、現在は普通に不安になる時もあれば怒る時も喜ぶ時もある。

その変化はタマモの成長とはまた違った感動が横島には感じられてならない。

人間としての人生はすでに一度終わっているさよだが、現在は幽霊というか神霊として第二の人生を歩んでいる。

それはかつての世界では決して珍しいことではないが、それでも家族同然のさよの成長はタマモの成長と同様に嬉しいものであった。

タマモとさよの二人が今日という日で何を感じ何を学ぶのか、横島は楽しみに感じながら朝のひと時を過ごしていく。



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