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平和な日常~冬~2

「情報を制する者は世界を制するなどとも言うが……」

同じ頃中等部の学園長室では、刀子と近右衛門が話をしていた。

横島からいろいろな真相を聞かされた刀子は、木乃香の護衛に加えて本来の仕事でもある木乃香以外の要人護衛についても近右衛門と何度か相談していたが全体的にはフェイト発見の一件の以前に戻すことで落ち着いている。

ただこの件を決めるに辺り刀子には横島から木乃香や他の麻帆良の要人に対する対外的な監視の現状の詳細な情報が提供されており、最終的に刀子は木乃香の護衛に関してはフェイト発見以前よりも減らすことは見送っていた。


「わしが思ってた以上に木乃香が監視されとるとはのう」

「やはり後継者候補の筆頭ですから。 それにお嬢様ならば御し易いと考えてるのが本音のようです」

木乃香の護衛に関しては危険性は横島の影響もあり当然ながら低いのだが、メガロを始めとする各国魔法協会の諜報員により少なからず監視されている。

流石に露骨に接触するような迂闊な者は居ないが、現状で対外的な近右衛門の後継者候補筆頭は紛れも無く木乃香であった。

メガロや一部の魔法協会は近右衛門が東西の統合を狙っていることを知っているが、現実的に考えて現状での東西統合は決して簡単ではなく最終的には一番利害がなく無難な木乃香が継ぐのではと見ている関係者は少なくない。

そんな状況で木乃香の護衛を突然理由が不明のまま減らすと、木乃香の周辺に何かしらの変化があったと気付かれる可能性がない訳ではないのだ。

はっきり言えば横島の存在を隠すには、当面は木乃香の周囲を動かさない方がいいというのが結論であった。


「それでお嬢様に情報開示をする件はどうするのですか?」

「その件は正直迷っておる。 危険性がないならば本来の予定通りでもいいのじゃが……」

木乃香の護衛に関してある程度方向性が決まると、刀子は引き続き木乃香への魔法の情報開示について尋ねるがこの件になると近右衛門の表情は芳しくなくなる。

フェイトの一件の安全が保障される以上は早く教えようとした本来の理由は無くなったが、代わりに新たな問題になったのは魔法世界の崩壊が近いということだった。

自分達に直接の被害はないとはいえ魔法世界が崩壊すれば大量の魔法世界人が地球に来てしまい相応の混乱が起こる可能性が高い上、現在の魔法協会の地位や権利を守っているのはメガロと地球側の条約のおかげという事実がある。

魔法世界と共にメガロが国家としての力を失えば、条約がどうなるかすら分からないのだ。

はっきり言えば木乃香達には今から魔法やその関連情報を教えて、将来に備えて貰いたいのが近右衛門の本音である。


「彼は何と言っておる?」

「横島君はバレそうな友人には最初に教えて仲間にしてしまえばいいと言ってましたよ。 魔法を知っても日常生活が変わる訳でもないからと」

近右衛門達や刀子にとって裏の秘密は重いモノだが、元々オカルトが秘匿されてなかった横島からするとやはり魔法を教えても何かが変わるとは思ってない。

この件に関しては刀子が横島の意見を尋ねてみたが、横島はこの件をあまり重要視してなく軽かったのだ。


「相変わらず軽いのう」

「彼の故郷では秘密でなかったようですから、価値観が違うようです。 ただあの子達ならばきちんと教えれば問題にはならないと私も思います。 無論私と横島君で見守る必要はあるのでしょうが」

裏と表の狭間で苦労して来た近右衛門や刀子からすると横島は価値観が違う上に軽いと感じるが、秘密が秘密でなくなると案外たいした問題にならないのかもしれないとも刀子は思う。

もちろん監督者は必要になるが、刀子はそれを自分と横島ですれば何一つ問題にならないかもしれないとすら感じていた。

基本的に横島の意見は魔法関係者からすると乱暴ではあるが、現状の木乃香と横島を取り巻く少女達を纏めて扱えばそれはそれで現状のまま纏まるとは思うのだ。

横島が麻帆良にとって重要人物となり木乃香と横島の関係が麻帆良にとっても重要ならば、それを崩さずに魔法の存在を教えるために木乃香と横島を取り巻く少女達も同じく扱えば崩す者が居なくなるのは確かである。

尤も横島の最大の問題点は周囲の少女達との微妙な距離であり、これが恋愛含みになると状況が変わる可能性があることだが。

はっきり言えば横島の恋愛の行方が魔法協会の将来にまで影響する可能性があるほど微妙な問題になりつつあった。



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