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神と人と魔の狭間で

「俺なんか不味いことしました?」

眩いまでの光が収まると最初に口を開いたのは横島だった。

なんとなくやらかしたのを理解してるようで驚く令子やおキヌや雪之丞と頭を抱える小竜姫の姿に恐る恐る口を開いたのだ。


「横島さん、名とはその存在を表す言葉なんですよ。 例えば横島忠夫という名は横島さんの存在を表す言葉となり名を知られただけでも呪いをかけたりすることも不可能じゃないんです。 神剣にとっても名前とは人とおなじく重要なものなんです。」

令子は薄々気付いているようだが名前とはオカルトにおいて重要な存在であり、特に神の使う神剣に程となるとその重要性は計り知れんほどになる。


「えっと、じゃあ取り消しってことで。」

「出来ませんよ。 幸い悪しき名前ではないのであまり問題はありませんでしたが、名前次第では神剣が魔性の剣になった可能性も。」

横島としては自分の神剣ならば名前を付けねばと考え小竜姫のような神剣になればいいと願いを込めて名前を付けたのが幸いだった。

間違って栄光の剣などと名付けたらどうなっていたやらと小竜姫は冷や汗を流す。


「小竜姫様の神剣も光ったのは何故かしら?」

「私、実は神剣に名前を付けてないんです。 私が一人前になったら名付けしようと決めてたので。 ただ神剣の方が横島さんの名付けに共感して自ら名前を選んだようです。」

「じゃあ、こっちも小竜剣なの?」

「はい。 知っての通り私と横島さんは魂のレベルの深い契約を交わしてますので私の力を横島さんが使うように横島さんの力を私が使うことも理屈の上では不可能ではないんです。 それはより高度になると互いに相手の名で術を行使出来るようにもなるはずなので、今回命名という儀式を横島さんが私の剣にもしたというのが結果でしょう。」

しかも横島の名付けは予期せぬ影響をもたらしてしまい、小竜姫の神剣が自ら小竜剣という名を選んだというのが小竜姫の神剣が共鳴して光った事実らしい。

結果として小竜剣は二つ生まれていて横島と小竜姫の想いに導かれるように一心同体とも言える二振りの神剣になってしまったようだ。


「とりあえず横島クンにはもう少しオカルトの常識を教える必要がありそうね。」

二振りの小竜剣の影響は正直小竜姫自身にも未知なところがあり、竜神族の長い歴史でも初めてのことだったりする。

元々個として力のある神族がそこまで他者と力を合わせることを求める者は居なく、過去に竜神族と人間や他種族が結ばれることはあったし神剣を下賜された者も居たがこんな事例は初めてなのだ。

小竜姫の方は自分の神剣に自分の名前を横島が付けたという自事態に喜ぶべきなのか分からず戸惑っていて横島は申し訳なさげに謝っていたが、令子は横島とついでに雪之丞の常識教育をもう少ししっかりしようとため息混じりに決めた。

横島が何を仕出かすかわからぬのは今更であるが、限定的とはいえ小竜姫の力や名前まで使った横島を無知なまま放置するのはあまりに危険だった。


一方小竜姫は気付いてなかった。

この先小竜姫ですら超える力を持つ敵が迫り来るのを知るが故に小竜姫の神剣が力を求めていた事実を。

小竜姫の神剣は小竜姫と共に時を超えてきた唯一の相棒なのだ。

この先アシュタロスすら倒しうる横島の力と可能性を神剣が何より求めていたことに小竜姫が気付くのはもう少し先のことになる。



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