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平和な日常~冬~2

「それで用件は木乃香ちゃんの護衛でしたね。 話は今度にしますか」

常識が二度も三度もひっくり返りそうな話を立て続けに聞いた刀子は若干混乱していた。

流石に頭を整理する時間が必要だろうと、この日は本題である木乃香の護衛の件については後日にすることする。


「話半分でも神話やファンタジーのようね」

そしてようやく話が一段落したと理解した刀子はため息混じりに本音をこぼすが、横島の過去も魔法世界の秘密も現実味がないほど突拍子もない話であった。

正直横島が多少話に脚色しているのではと疑いたくなる刀子は常識的な人間なのだろう。


「普通は信じられない話ですよね。 俺も高校二年までは普通の一般人だったんでよく分かりますよ。 ぶっちゃけ学園長先生達がよく信じたなと驚いてるくらいですから」

横島の手間信じると言いたい刀子だが常識的な思考がそれを拒否するし、そこまで安易に信じていいのか正直分からなかった。

そんな刀子に横島は理解を示して信じられなくて当然だと言い切る。


「一般人って、魔法が秘匿されてないのなら一般人も魔法を習えるってこと?」

ただ刀子はやはり横島の過去に興味を抱いていた。

横島が語った高校二年まで一般人だという言葉に食いつき、横島過去を露骨に聞くのではなく横島の世界の仕組みを通して尋ねてみる。


「いやそこはまた違っていて、こっちの西洋魔法みたいなのは俺の世界だと失伝してるんですよ。 厳密にいえば神族が人界に居ましたし霊的な環境は結構違います。 単純にこっちの世界は地脈なんかの魔力がかなり薄いですし」

コーヒーを飲みながら淡々と語る横島の話を刀子は静かに聞いていた。

それはまたもや刀子が知りたかった核心ではなかったが、世界の違いに関しても多少は興味がある。

横島は何か証拠になる物でも見せようかと、そんな刀子に物置代わりにしている影から神通棍を取り出すと手渡す。


「それは俺の世界で一般的な除霊に使ってた武器です。 本当は霊力を使うんっすけど気でも大丈夫ですよ」

一方手渡された神通棍を刀子は不思議そうに眺めていた。

この世界にも様々なマジックアイテムがあるが、それは当然ながら見たことがない物である。

刀子は言われるままに神通棍に気を通してみると、警棒のように伸びた神通棍は刀子の気を何倍にも増幅して棍に刻まれた文字が綺麗に浮かび上がっていた。


「すごいわ……」

「流石ですね。 思ってた以上に神通棍との相性もいいです」

思わず本気で気を込めてみる刀子に神通棍は反応するかのように僅かに気がスパークすると、横島はまるで令子が神通棍を持っているような錯覚を一瞬感じてしまう。

この手のオカルトアイテムは霊能者ならば誰でも使える反面、当然ながら相性もあり令子が神通棍と相性が最高だったのは言うまでもない。

そもそも厳密に言えば気と霊力は似て非なる力であるが、大元を辿れば同じ魂の力なので力の出し方というか使い方が多少違うだけとも言えた。

従って気の使い方の上手い刀子ならば神通棍との相性がいいだろうと横島は見ていたが、実際には予想以上である。



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