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平和な日常~春~

それから横島はテストまでの期間に夕方の短い時間で明日菜とのどかに勉強を教えていたが、成果が上がっていくのはやはりのどかの方だった

短期間で劇的に成果が出るほど勉強は簡単な問題ではないのだ


「明日菜ちゃん、次はここを重点的に覚えようか」

なかなか成果が出ない明日菜に横島が取った方法は、テスト範囲の中で更に勉強する所を絞り込むことだった

いわゆる山かけなのだが木乃香とのどかのノートや授業の話を参考に、テストに出そうな場所を絞り込んで明日菜に教えていたのである

横島が継承した知識でも、テストまで一週間もない現状で確実に成果を出す方法は通常の方法ではなかったのだ

まあオカルト技術を使えば裏技はいくらでもあるが、流石にそこまではしてない


「山かけはテスト勉強の常套手段ですが、横島さんは自信があるのですか?」

「俺は君達の先生を知らんから、実際はなんとも…… ただ授業の様子を聞いた限りでの推測だよ。 まあ無理に全部覚えようとしても無理だしさ、出来る範囲を絞った方が成績は上がるだろうからさ」

勉強する範囲を悩む明日菜に対し横島が簡単に範囲を決めてる事に夕映は相変わらず不思議そうだったが、横島なりに考えた結果だと説明する

基本的に自分の事は適当な横島だが、木乃香達の事は割と真剣に考えていたのだ


「得意不得意もあるしさ、明日菜ちゃんが覚えやすいとこから覚えた方が確実だと思うんだよ。 一応出そうな場所を教えるから夕映ちゃんも後で目を通してみなよ」

相変わらず軽い調子で語る横島には一見するだけだと説得力など皆無に見えるが、夕映は結構当たりそうな気がして横島の話を聞いている


(この人は見た目で判断すると必ず結果が真逆なのです。 それに頭がいいのは本当ですし…… 山かけが当たってる気がします)

夕映は横島と知り合いあまり月日は長くないが、見た目でかなり損をしているタイプだと気付いていた

一見すると頼りないただの学生にしか見えないが、実はかなり優秀なのだから


(ただ、どこか抜けてるとこがあるのも確かなのですよね)

今回も横島なりに考えがありそれが当たる確率が高いと夕映は考えているが、横島の問題は何故かその結果が自分の利益にならない事だった

本当はとても優秀なのにどこか抜けている

木乃香達の横島に対する最近の印象は、そんな印象がますます強くなっていた


「しかし、なんでこの学校はテストのクラス順位で博打なんかするんだ? 倫理的に問題じゃあ……」

夕映が僅かに考え込んでる間に、横島は麻帆良スポーツを見て苦笑いを浮かべている

今日の麻帆良スポーツにはクラス対抗のトトカルチョのオッズや情報が書かれたページがあり、さながら競馬新聞のようであった


「賭けるのが食券ですからね。 それに賭けた食券は全て生徒に還元してます。 基本的には生徒同士の社会勉強の一貫らしいですよ」

横島の疑問に夕映はそれらしい理由を説明するが、それも建前で騒ぎたいだけなのだと言うと流石の横島も苦笑いを浮かべたままだった

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