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平和な日常~冬~2

そんな相変わらずの微妙な雰囲気である横島と千鶴を静かに見守る木乃香とのどかは、少しだけ胸の奥がモヤっとする気がした。

端から見てると恋人のような会話にすら聞こえてしまうほど、横島と千鶴はお互いを理解しているように見えてしまう。

元々横島の場合は日頃から人の相談に乗ったりすることも多く、占いの客の大半は女子中高生の恋愛相談と化しているので珍しいことではないはずなのだが。

ただ教師ですら心配しないような千鶴を特に心配だと言い切る横島は、やはり常人とは違うなと改めて感じる。

実際横島と一緒の時の千鶴は、普段よりも幼いというか可愛く見えると二人は思うのだ。

まあ横島の周りには女の子が多いのは今に始まったことではないし、千鶴に限らず美砂達や刀子など横島に気があるような女性は身近に結構多い。

それでも目の前で微妙な雰囲気になられると、あまり気持ちのいいものではなかった。

尤も木乃香なんかは千鶴以上に横島と親密なので、端から見ると人のことは言えないのだが本人は意外と気付いてないようである。

そしてのどかに至ってはそんな千鶴や木乃香を客観的に見て少し羨ましいと思うが、いくら男性に慣れて来たとはいえ奥手なのどかでは現状以上はどうしようもなかった。



「やっぱり冬の新聞配達は寒いわ~」

その後は千鶴の件をそれ以上話すことはなく調理に戻ると、ちょうど新聞配達を終えて店に戻って来た明日菜が厨房に入って来る。

厨房から奥に事務室があるので明日菜はそこで着替えるのだが、横島は暖かい飲み物を入れて明日菜を待つ。


「お疲れさん。 風邪引くといけないから気をつけろよ」

「うん、分かってる」

毎日ではないが朝夕の新聞配達をしながら横島の店も手伝う明日菜は相変わらず忙しい。

横島は暖かい飲み物を手渡すと風邪を引かないようにと軽く注意をするが、木乃香達はそんな光景を見て何故かおかしくなってしまい笑っていた。


「なに、どうしたのよ?」

「横島さん、さっきから人の心配ばっかりしてるんや」

突然笑われた横島と明日菜は不思議そうになんかしたかと顔を見合わせるが、木乃香とのどかは先程から人の心配ばっかりしてる横島が何故かおかしかったようである。

自分のことは適当なのに、人のことになると奇妙なほど細かいのだから笑ってしまうのも無理はない。

特に先程モヤっとした気持ちを感じた木乃香とのどかは、横島はこういう人なんだと改めて理解すると胸のモヤモヤが消えた気がした。

この先どうなるかは分からないが、こんな横島が変わるとは思えなかった。


「また、なんかしたんですか?」

「いや、ちょっと無神経なことをな」

人の心配ばっかりしてると笑う木乃香達と千鶴を見て明日菜はまた横島が何かしたのかと疑うが、横島は言いにくそうに千鶴に無神経なことを言ってしまったとこぼす。


「子供扱いはダメですって言ったじゃないですか」

「いや~、子供扱いしたつもりは……」

結局横島は明日菜に、中学生を子供扱いするのはダメだと注意されることになる。

横島に悪気がないのは明日菜も理解してるが、時々父親目線のようになって子供扱いする件はダメだと以前から注意されていた。

同時に女心を分かってないとも注意されるが、先程まで心配していたはずの明日菜に今度は注意される横島と明日菜の関係は木乃香達の更なる笑いを誘うことになる。



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