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平和な日常~冬~2

「おっきいがっこうだね」

「ここでさよちゃんとか木乃香ちゃん達が毎日勉強してるんだよ」

さてその日の午後になると横島はタマモを連れて女子中等部を訪れていた。

意外にもタマモが女子中等部の校舎を訪れるのは今回が初めてであり、日頃さよや木乃香達が通う学校に来れたことが嬉しそうである。


「あれ、マスターとタマちゃん遊びに来たの!?」

この日はあいにくの小雨模様だったので電車で中等部へとやって来た横島達だったが、校門の警備員に許可をもらい中に入ると途端に注目を集めて人だかりが出来てしまう。

相変わらず人気者であるタマモは顔なじみの少女達と元気よく挨拶を交わすが、校舎に入る頃になると横島共々身動きが出来ないほどの少女達に囲まれていた。


「ちょっと茶道部との約束があってな」

多くの少女達に囲まれたままで校舎内を移動する横島とタマモだったが、ただでさえ男性が少ない女子中等部の校舎の中は若い女の匂いがしていて横島はふと昔のことを思い出してしまう。

かつての自分ならば血の涙を流して喜ぶかテンションが上がって暴走したんだろうなと思うと、少しだけ懐かしくもあり複雑な心境にもなる。

女子には毛虫の如く嫌われるか空気扱いが当然だった横島にとって、不特定多数の少女達に囲まれることは相変わらず慣れないものがあった。

尤も現状は横島が人気というよりはタマモが人気だと言った方が正しいが。

横島も麻帆良ではモテない訳ではないが、元々のスペックというか素材の違いというか人気ではタマモには敵わない。

かつて傾国の妖怪とまでに言われたその美貌は幼いながらに片鱗が見えていた。

まあタマモが現状ほどの人気なのは見た目の影響もあるが、大部分は内面にあり驚くほど優しく人懐っこいからではあるが。


「おちゃをのみにきたんだよ」

そんな横島とタマモが中等部を訪れた理由はクリスマスパーティーの一件に絡む話し合いの為で、ついでにタマモに一度茶道を体験させてみないかと招待されたのだ。

クリスマスパーティーの一件はかなり話が進んでいるが、スイーツに合わせて抹茶を提供することはすでに決定しており女子中等部の茶道部と大学部の茶道部の協力を取り付けている。

まあお茶を入れるだけならば横島と木乃香達でも可能なのだが、当日の状況を考えると別に頼んだ方がいいとの結論に達していた。

特に木乃香は新堂と一緒にスイーツを食べに訪れる関係者への挨拶なんかも必要であり、意外と忙しいとの事情がある。

ちなみに茶道部との話し合い自体は木乃香達と茶道部に入部しているさよが進めていたので横島自身はほとんど関与してなかったが、横島と茶道部は茶々丸を通して麻帆良祭以前から付き合いがあっただけに話し合いはスムーズに進んだらしい。

この日も名目はクリスマスパーティーの話し合いだとしていたが、実質的には横島と茶道未体験のタマモを招待しただけに近かった。

特にタマモはさよから茶道部の話を何度も聞いていて、以前から興味津々だったらしい。



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