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新しき絆

魔鈴はそのまま横島を強く抱きしめたまま泣き続ける

部屋には魔鈴の泣き声が静かに響く

その姿はまるで少女のようで、初めて見る姿であった

横島は魔鈴が何故泣いてるのかわからないが、優しく抱きしめて頭を撫でる


どれくらい時間が過ぎただろう

泣きやんだ魔鈴はゆっくり顔を上げて横島を見つめる

「横島さん、昨日のこと覚えてますか? 横島さん凍死する寸前だったんですよ」

魔鈴は悲しみに満ちた表情で横島を見つめる


「昨日……」

横島は必死に考え思い出そうとする


そして苦しそうな表情になる

「俺…、なんかわかんないけど、おかしかったんです。 魔鈴さんが居なくなると考えたら… その後は東京タワーに行ったとこまでは、なんとなく覚えてるんですが…」

横島は再び胸が苦しみだす

意味がわからない恐怖が溢れてくる


「横島さん、私は何があってもあなたの側に居ます。 それにイギリスには行かないと昨日の昼も話したじゃないですか」

魔鈴は困惑した様子だが、はっきりと伝えた

横島には夜中の気絶する前の記憶が無いと理解したので


「……へっ!?」

横島は目を見開き驚く

そしてその瞬間に、胸の苦しみや恐怖は綺麗に消えていく


2人は沈黙のまま見つめ合う

魔鈴は少し心配したような表情だし、横島は申し訳なさそうだ


「なんかよくわかんないけど、俺は勘違いしてたみたいっすね」

横島は申し訳なさそうに謝る


「私はずっと横島さんの側に居ます! ですから不安や苦しみがある時は必ず話して下さい!!」

魔鈴は怒ったように強い表情で横島を見る


「すいません… 心配かけて、俺もよくわからなかったんっす」

横島は初めて見る魔鈴の怒りの表情に謝る


「そんなに私は信用出来ませんか?」

魔鈴は少し寂しそうな表情になり横島に問いかける

魔鈴は気持ちは伝えてないが、横島を精一杯愛して支えてきたつもりである

もう少し信頼して欲しいと…、頼って欲しいと思う


「いや、信頼はしてますよ。 一番! でも…、不安だったんです。 居なくなると考えた瞬間から…」

横島は昨日のことを思い出しながらもゆっくり話した


「横島さん…」

魔鈴は横島を見ながら考える

横島は大切な人を失うのを誰よりも恐れている

そして、自分も横島にとって大切な人になったのだと思うと不謹慎だが、少し嬉しく感じてしまう


「もう、二度と一人で抱え込まないで下さいね?」

魔鈴は横島を抱きしめて囁く


「はい、心配かけてすいませんでした…」

横島は魔鈴の温もりと優しさが心に染み渡る


「横島さん、今日1日私の部屋で安静にしてて下さいね?」

魔鈴はホッとしたように笑って横島に話す


「魔鈴さんの部屋?」

横島は驚き辺りを見回す

そう

昨日魔鈴は横島がいつも使ってる部屋ではなく、自分の部屋に連れて来ていたのだ


「はい、私がいつも使ってる部屋ですよ?」

魔鈴は横島が驚き見回すのを不思議そうに見ていた


横島は顔が赤くなる

「すいません」

横島はとりあえず謝ってしまう


「何故謝るんです? 本当は横島さんの側で看病したいんですが…、明日はバレンタインなんで今日は休めないんです。 今日は大人しくここで休んで下さいね!」

魔鈴は不思議そうにしながらも横島に言い聞かせるように話す


横島は魔鈴の部屋に少し興奮する自分を隠して頷く

さすがにあれだけ心配をかけておいて、大丈夫とは言えなかった



横島はその日

魔鈴のベッドでゆっくり休んだ


魔鈴も横島も気がつかなかったが…

かすかに魔鈴の匂いのする部屋は、横島の不安定な精神には最適だった


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