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平和な日常~冬~2

「必要な人には話しても構わないですよ。 。 俺は受け入れてもらう側ですから」

正直横島の秘密は扱いに悩む近右衛門は出来るだけ真実を知る人間が少ない方がいいと考えるが、立場上出来ることと出来ないことがある。

ただ横島はこの点についても軽かった。

一度真実をぶっちゃけて開き直ったとも言えるが、元々異空間アジトは土偶羅の承認がなくば神魔の指導者ですら侵入は出来なかったのだから第三者に知られたところで直接的な実害が出る訳ではない。

加えて最近開発を始めた異空間アジトのダミー惑星の存在もあるし、土偶羅が情報対策を講じるはずなので横島はさして心配はしてなかった。

そしてこれが一番のポイントだが、異空間アジトの存在は実際に見た者でなくば信じないだろうと思うのだ。

おそらく多少情報洩れした程度ならば埋蔵金や都市伝説扱いで誰も本気にはしないだろうと横島は考えている。

結局近右衛門達に自分が受け入れられたという横島の心理的な余裕は、近右衛門が考えてる以上に大きいのかもしれない。


「うむ、大丈夫なのかね?」

「あそこは第三者が侵入するのは不可能なんですよ。 まあ情報洩れした時には多少の撹乱工作くらいはするでしょうけどね。 あと学園長先生達は一度招待しますから。 よかったら雪広会長達もその時に一緒に視察しますか?」

相変わらずの軽さが余裕の現れなのかあまり考えてないのか判断に悩む近右衛門は少し不安そうに大丈夫なのかと尋ねるが、横島は簡単に第三者の侵入が不可能なので問題ないと告げるだけであった。

というか横島は近右衛門と穂乃香が信じたいのだがどう受け止めていいか迷ってるのを感じており、一度異空間アジトに招待すると言い出す。


「どっかのテレビ番組みたいに軽いわね」

「そうっすか?」

なにかまるでテレビのお宅訪問番組のような軽さがある横島に穂乃香は思わず笑ってしまい横島も一緒になって笑っているが、近右衛門はそれでいいのかと少し心配げだ。


「そういえばタマモとさよちゃんも一度連れて行く約束してるんですよね~」

「あの子達には話してたの?」

「麻帆良に来る前の話はしてませんよ。 子供に話す内容じゃないですから。 ただ秘密の故郷があるような話はしてるんです」

どうせならみんな一緒に行こうかとまるでピクニック気分のような様子の横島だが、近右衛門は元々の横島の性格もあってやはり判断に迷ってしまう。

ただタマモやさよにも過去を教えてないと笑って話した横島の表情に、ほんの一瞬だけ悲しみが見えたことで近右衛門はそこを追求することをやめる。

人の過去や状況に土足で踏み込みほど近右衛門は無神経ではないし、今日は信頼と協力する意思を確認出来ただけで十分だった。

互いに意思疎通が必要なことは多いが、それはこれから時間をかけて進めていけばいいだけなのだ。

というか当初の予定では木乃香や明日菜が狙われた際の協力と、木乃香達に魔法の存在を教えた後のフォローを頼みたかっただけなのだから改めて全く予想外の展開になったなと考えると苦笑いが出てしまう。

今日の本題のはずの木乃香と明日菜への魔法の情報開示どころか、魔法協会の方針を根本から見直す必要が出てしまったことには素直にため息しか出ないが。

しかしそれでも暗中模索でしかなかった明日菜を守れる目処がついたことは限りなく大きい。


結局この夜のその後はあまり深い話はしなくなり割と無駄話というか世間話程度になってしまったが、近右衛門も穂乃香もそれでいいと感じていた。

横島は完全なる世界の動きを確実に把握してると語ったし、万が一の時には始末出来るとも語った。

その話の真偽はまだ確認してないが近右衛門や穂乃香からすれば、話が半分だとしても最低限フェイトに不意打ちのように襲われる心配が低くなっただけでも今は十分である。

信頼も協力も一朝一夕では築けるものではないし、今日はその始まりの一夜となっただけで十分な成果と言えた。

それはやはり歴史を変えるほどの始まりなのだが、決して急がず焦らない近右衛門だからこそ横島と上手くやっていけることになる。



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