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平和な日常~冬~2

今夜の話し合いで始めて近右衛門が声を荒げたのがデュナミスという名前だったことに、横島は少し驚きつつ近右衛門の再度の問い掛けを肯定する。


「やはり生きていたか。 奴が一番厄介なんじゃがのう」

デュナミス生存の情報に近右衛門は頭を抱え穂乃香は複雑そうな表情を浮かべた。

デュナミスの過去はあまり明らかになってないが、二十年前の戦争以前から創造主の腹心の部下として全盛期には十万にも膨れ上がった組織の構築や統率に加え様々な工作など裏方として計画を支えていた存在である。

近右衛門や穂乃香や詠春からすれば基本的に戦う為に創造主によって造られたアーウェルンクスシリーズよりも、裏でコソコソと動き回るかの者の方が数倍厄介だと見ていた。


「詳しくは後でちゃんとした情報を届けますけど、今のところ大人しいみたいですよ。 高畑先生とえーと、クルト・ゲーデルって人が随分探してたようですからね。 それと俺がフェイトを暴露させた件もあって動きたくても動けないみたいですけど」

「クルト・ゲーデルか。 確かに奴ならばデュナミスを追い詰められるじゃろうが……」

次から次へと戦略級の極秘情報をポンポンと軽く暴露していく横島に、近右衛門は冷や汗を流しつつじっくり話を聞く必要があるなと考えていく。

高畑やクルトがデュナミスを探していたのは近右衛門も知っていたが、ナギが麻帆良に封印されてる事実を知らない高畑達は同時にナギやアルビレオ・イマも探しているなんて事情もある。

そもそも高畑にですらナギの存在を隠す最大の理由は、クルト・ゲーデルとの繋がりで真相がメガロに洩れる可能性が高いことだろう。

高畑はかつての同士であり仲間だったクルトを心の中では信じているが、近右衛門は全くと言っていいほど信じてない。

そもそも近右衛門とクルトでは価値観から立場まで何もかもが違い過ぎるし、何より守るべきモノの違いから利害や手法が一致しない可能性が高いのだ。

ネギの去就の一件でも分かることだが、メガロメセンブリア市民を守る為には手段を選ばないクルトは危険過ぎて関わりたくなかった。


「どうやらその問題は基本的な情報の精査と情勢の再分析からやり直す必要がありそうじゃな。 とりあえず君の秘密と君から教えられた情報の扱いはどうする?」

最早その場しのぎの対策は悪手にしかならないと感じた近右衛門は、横島の情報を加えて根本的な情勢分析からやり直す必要があると感じる。

そして今夜のうちに決めておかねばならないのは、横島の秘密と横島から提供された情報の扱いであった。


「お任せしますよ。 情報に関しては専門外なんで土偶羅っていうか芦優太郎と相談して下さい。 必要な形を言えばに纏めてくれますから。 第三者に見せるなら裏付けも必要でしょうし、そっちもサポートしてくれるように頼んどきます」

「うむ、任せるか。 秘匿する範囲に悩むのう」

近右衛門に自身の秘密や情報の扱いを聞かれた横島だが、相変わらずな様子で任せるという名の丸投げをしてしまう。

まあ横島としては実務的な話は土偶羅としてくれとしか考えてないが、近右衛門としては最低限横島の意思を確認したい。

それに近右衛門としては今まで麻帆良を共に支えて来た雪広家と那波家には、秘密を作れないというか作ったことがないという事情があった。

流石に個々の問題全てにおいて必ず情報を共有してる訳でもないが、横島の情報はどう考えても雪広家と那波家には出所を隠すことは不可能である。

そもそも日頃の近右衛門は雪広グループや那波グループから得られる情報が多いだけに、自分の時だけ情報源の秘匿なんか出来るはずがない。

というか近右衛門は横島の過去や秘密がこれほど扱いが難しいとは流石に考えてなかった。



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