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平和な日常~冬~2

「しかし、君があの一件の黒幕だとすると、逆に手の平の上で踊っていたのはわしらということになるのう。 しかも今日の話し合いの本題は元より魔法協会の戦略まで根底から変わることになるわい」

「そうね」

横島の協力により近右衛門や穂乃香が得たモノは限りなく多いが、同時に仕事も限りなく増えたのが現実だった。

近右衛門は先程横島が語った手の平の話を持ち出して、本当に手の平の上で転がされたのは自分達だったと少し疲れたようにこぼす。


「そんなつもりは全くないっすよ。 ただフェイト・アーウェルンクスの情報は俺も見ましたけど、流石に放置は出来ないかなと。 俺も出来ればあの連中には関わりたくないですし……」

二人は決して横島を責める様子はなかったが、この数ヶ月の苦労を考えると疲れたようになるのは仕方ないだろう。

横島は流石に少し後ろめたさが込み上げて来てしまい慌てて言い訳をするが、近右衛門と穂乃香はそんな横島を見て思わず笑っていた。


「すまんのう、君を責めてる訳ではない。 実際あの一件は魔法関係者をいい意味で掻き回したからのう」

フェイトを暴露した存在が誰かとその真意が何なのかという問題は、地球側魔法協会のみならず魔法世界の国々や地球側の一部の国家の情報機関ですら考えていたり探してる真っ最中である。

黒幕として一番疑われてるのは陰謀の前科が多々あるメガロメセンブリアだが、実は黒幕には諸説あり関東魔法協会が黒幕ではとの説も中にはあった。

そもそもフェイトの存在の証拠として残るのはイスタンブールの魔法協会が記録用に残した資料と、直接会った魔法協会関係者の証言のみである。

一応映像資料も少しだが存在しておりイスタンブールの魔法協会は元よりメガロメセンブリア情報部も後日調査した結果フェイト・アーウェルンクスだと認定したが、前後の動きが全く掴めないのでフェイト・アーウェルンクスの存在そのものに疑問を持つ者さえいる。

諸説の主流はフェイトの件はメガロメセンブリアのマッチポンプであり、次には立派な魔法使いが地球に大量に来るぞと警戒することだが。

逆にあれはメガロメセンブリアと対立する近衛近右衛門の工作だと考える者も少数だが存在した。

この問題を迷走させた原因は、暴露した者の情報もフェイトの情報も前後全くないことだろう。

ただ関東魔法協会の場合はフェイトの一件の影響でメガロメセンブリアとの対立が小康状態になったことで、メガロメセンブリアから目先を逸らすための工作ではと疑われていたが。

加えて近右衛門はフェイトの一件以降に関西と協力を正式開始したものだから、東西協力の情報をいち早く掴んだ組織の一部からは黒幕候補の一人にされていたりもする。


「正直、俺の立場からすると僅か数人のテロリストよりも向こうの国の方が厄介なんっすよ。 ぶっちゃけあの連中は話し合いも妥協もしないでしょう? 選択肢が力での勝負一択ならこれほど簡単なことはないっすから」

「君ならアーウェルンクスに勝てると? それと連中の組織の生き残りはどの程度なんじゃ?」

そのままフェイトの一件で慌てた横島は出来れば関わりたくないとは言うが、同時に実際に対処するのは簡単だと軽い調子で言い切った。

近右衛門はそんな横島の言葉に少し緩んだ空気を再び引き締めるように対フェイトの勝算と、この問題の根幹に関わる完全なる世界の現状を尋ねる。


「簡単な情報でしか知りませんけど確実に始末は出来ますよ。 別に奴と力比べや魔法比べをする気はないんで。 奴が本気を出す前に終わらせます。 それと完全なる世界の現状の人員はフェイト・アーウェルンクスとデュナミスとかいう奴の二人と、確か子供の手下が数人居たような気が……」

「デュナミスじゃと!! まさか二十年前からの生き残りのデュナミスか!?」

真剣になった近右衛門に合わせるかのように横島は対フェイトの勝算と完全なる世界の現在の人員を答えるが、近右衛門が一番反応したのはデュナミスの名前だった。



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