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平和な日常~冬~2

「いや木乃香ちゃん達の感情は、恋愛や親愛が入り混じった程度ですよ。 初恋にすら届いてないでしょう」

「横島君、それ本気で言ってるの?」

この段階で横島も木乃香達に好意を抱かれてないなんて見当違いなことを言うつもりはなかったが、横島からすると木乃香達の感情は恋愛や親愛が入り混じった程度だとしか見てない。

そんな横島に穂乃香は呆れた表情で本気かと尋ね近右衛門にも視線を送るが、近右衛門は横島はこういう男だと理解してるからか笑ってるだけだった。


「いずれ大人になれば本当に好きな人を見つけますよ。 俺はそれまでは見守るつもりですし」

穂乃香がいろいろ誤解をしてるなと感じた横島は必死に説明していくが、呆れたような表情は変わらない。


「まあその件は後日でいいじゃろ。 それで君に協力して欲しいことじゃが」

いろいろ横島を過大評価していた穂乃香は横島が恋愛に関しては全くダメなのだとようやく理解するが、近右衛門はその件を横島に話しても無駄だろうと思ったらしくやっと本題に入ろうとする。


「フェイト・アーウェルンクスの件っすね。 実は連中の存在を暴露したのは、さっき話したアシュタロスの遺産の管理者の土偶羅って奴なんです。 頼んだのは俺なんっすけどね」

近右衛門が話を逸らしたというか本題に戻したことに横島はホッとしつつ、フェイトに絡む自分達の行動を暴露した。

だがいつの間にか緊張感が薄れてる横島の淡々とした暴露にも、近右衛門と穂乃香はまたしてもあまり驚かなかった。


「もしかして信じてませんか?」

「いや、君がアシュタロスの遺産の話をした時点でその可能性に気付いていたのじゃよ」

あまりに反応が薄い二人に横島は信じてないのかと一瞬疑うが、近右衛門も穂乃香もなんとなくその可能性に気付いていたらしい。


「単純に考えてあの暴露で一番損をしたのはメガロメセンブリアで、一番得をしたのはわしらじゃからな」

横島の過去や正体はともかくとして、性格や価値観まで欺いていたとは近右衛門は考えてない。

第一女性に対する恋愛下手は、今さっきも隠しようがないほど露見したばかりなのだ。

そうすると人知を越える遺産を持つ横島がフェイトの存在に気付きこっそりと力を貸したのかと考えると、あの一件はそれなりに筋は通るのだ。


「はっきり言えば奴に関西に侵入されると致命的じゃったからのう。 それにあの一件の後のメガロメセンブリアの対応を見てると無関係な可能性が高い。 ところで君はどこまで知っておるんじゃ」

「えーと、明日菜ちゃんの正体とか世界樹の地下の封印とかは知ってますよ。 ああ、ついでに『完全なる世界』の連中は今も土偶羅にマークさせてます。 流石に明日菜ちゃんをあんな奴らにくれてやる気はないんで」

「……全部知っておったのか」

横島の緊張感が無くなるのに合わせるように近右衛門の緊張感もなくなり遠慮なく話し始めるが、近右衛門は横島が全てを知っていると告げるともっと早く話をするべきだったかと内心では少し後悔する。

まあ問題はそれほど単純ではないが、もう少し以前から意思疎通をしていればと思わなくもない。

ただそもそも近右衛門と穂乃香は今夜の話し合いではお互いの意思の確認程度にしておくつもりだったので、横島が自身の過去を話し出したのは完全に予想外でもあった。

明日菜の件で高畑にも考える時間を与えたように、横島にも今夜は近右衛門達の意思を伝え考えてもらおうとしたに過ぎないのだ。

横島はさっさと権力者としての近右衛門の実力に完敗を認めたが、近右衛門の内心が綱渡りだったのはこの日も変わらなかった。



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