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新しき絆

それから横島の様子がおかしかった

話しかけても上の空だし、顔色が悪い


「横島さん、大丈夫ですか? もしかして体調が悪いんですか?」

魔鈴は心配そうに横島を気遣う


「いや、大丈夫っすよ。 なんとも無いっす」

横島は笑顔を作って話すが、魔鈴達には笑顔に見えない

魔鈴達は心配そうに顔を見合わせる


一方横島は、精神的に混乱していた

魔鈴が居なくなると一瞬考えてから普通では無い

自分では理由もわからず、ただ平静を装っている


理由は一つ

横島の精神はルシオラを失った傷が癒えてない

だが、魔鈴の存在が横島の支えになり、表面的に安定していたに過ぎない


横島は自分で気付かないうちに、魔鈴に依存していた

魔鈴も横島の精神状態を理解して、不安を与えないように支えていたのだが…

今回の件で、横島は魔鈴を失う恐怖にとらわれている


愛する人を目の前で失った横島

今再び、愛する人が横島の前から消えるかもしれない

その恐怖が心を支配している


横島はルシオラへの想いと救えなかった罪悪感から、魔鈴への想いは無意識に抑えていた

同じくらい愛しい2人の女性を、横島はどちらかを選ぶなど出来ない

今までは魔鈴が全てを理解して横島を支えていた為、バランスがとれていた

しかし魔鈴を失う恐怖によって、絶妙なバランスに成り立っていた横島の精神が崩れかけていた……


タマモとシロは夕方に帰り、横島は夕食を食べてからアパートに帰る


「んじゃ、帰りますね。 ご馳走さまでした」

横島は魔鈴に笑顔で挨拶して帰るが、魔鈴の表情は優れない

相変わらず、横島の表情がおかしいのだ


「横島さん、大丈夫かしら…」

魔鈴は横島が帰った後も不安が消えない


横島が帰って30分後、魔鈴はどうしても不安が消えず横島を追いかける

ほうきに乗り横島のアパートに向かうが横島は帰って無かった

「横島さん……」

魔鈴の不安はどんどん増していく

魔鈴は慌ててほうきに乗り、付近の横島が行きそうな場所へ向かう



その頃横島は、何故か東京タワーの上に居た


「俺どうしたんだろ… 胸が苦しい。 怖いんだ… 全てが……  ルシオラ……」

横島は夜の東京の街を遠く見つめながら呟く

東京タワーに寄りかかり、魔法のほうきを抱きしめるように持っているその姿は、今にも壊れそうなほど儚く見える


街のネオンや車のライトなど様々な光が見えるが、横島には見えてない

冷たく寒いその風は横島に深く突き刺さる

横島はそのままその場所で、何も言わずに動かない


最早、何も考えれなくなっていた



それからどれくらい時間がたっただろうか…

時間は深夜になっていた

魔鈴はあのままずっと横島を探すが見つからない

アパートも一度も帰った形跡も無いままだ

「横島さん、いったいどこに…」

魔鈴は寒さも感じなくなるほど体が冷えているが、それどころではない

自分の霊感が横島の危機を感じている


「まさか……」

魔鈴は凄まじいスピードでほうきを飛ばす

深夜の闇をほうきが静かに飛ぶ


「やっと…見つけた…」

魔鈴は遠く東京タワーの上に、うずくまるように居る横島を見つけた


1分1秒も早く側に行きたかった

今すぐ抱きしめないと、二度と会えない気がする


魔鈴が慌てて東京タワーの上に降りるが、横島は反応無い


「横島さん!!」

魔鈴は叫んで近寄る


横島は一瞬動いて声の方を見つめる

「………魔…鈴…さ…ん」

横島には魔鈴が夢か幻に見えた


「横島さん!! 横島さん!!」

魔鈴は必死に横島を掴み抱き締める


「横島さん! 大丈夫ですか!!」

魔鈴は冷たくなっている横島を強く強く抱き締める


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