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平和な日常~春~

同じ頃麻帆良学園に複数ある教員宿舎の一つに住んでいる高畑の部屋はシンプルなものだった

普通の電化製品や家具などはあるが、部屋には荷物や書類などが整理されないまま山積みになっている

そんな部屋で高畑は無言のまま数枚の写真を見つめていた


(学園長の考えは確かに分かる。 アスナ君の平和な生活を守るにはネギ君はあまりに危険な存在だ。 しかしネギ君にとっても麻帆良は必要なんだ)

高畑が見ていたのはかつての仲間達である赤き翼のメンバーと幼い頃のタカミチが写った写真や、ナギやアリカと写った写真である

幼い頃の激動の日々を高畑は今でも一日たりとも忘れた事がない

苦労の連続だったあの頃だが高畑は幸せだった

ナギ達や師匠だったガトウが居たあの頃は、高畑の人生で一番幸せで充実していた頃である



そんな高畑は先日の近右衛門とのやり取りを思い出していた

高畑自身、近右衛門の立場や考えはよく理解している

かつて行く宛のないアスナを匿った近右衛門だが、同時に高畑自身も救われたのを忘れてない

かつて赤き翼のメンバーと共に活動した高畑は、秘密を知りすぎてる存在として一部の過激な勢力から狙われていたのだ

そんな勢力から高畑を守り一人前になる為に力を尽くしてくれたのは他ならぬ近右衛門だった

今でこそ圧倒的な戦闘力のおかげで味方も多いが、かつてアスナを連れて逃げていた頃は周りが敵だらけだったのだから


「僕にナギや学園長の半分でも力があれば……」

ネギには麻帆良と近右衛門の庇護が必要なのを、高畑は一番感じていたかもしれない

かつての自分と同じように、ネギには多くの人と触れ合い成長する機会が必要なのだと

それを実現してやれない自分の不甲斐なさに、高畑はやり場のない怒りを感じてしまう


「師匠……、僕はどうすればいいのでしょうか」

アスナの未来とネギの未来をどうにか両方守る方法はないものかと高畑は頭を悩ます

基本的に近右衛門と高畑の価値観に大差はないが、根本的に違うのは高畑が近右衛門を少々過大評価してる事だった

近右衛門ならばネギを受け入れても上手くやれると高畑は考えているが、近右衛門はそんな危険なギャンブルをしたくない

現時点でネギを守れる祖父が居るのだから、わざわざ危険を犯してまでネギを受け入れる必要を感じないのだ


結局高畑はアスナとネギの将来や自分の現状を考え、しばらく悩む事になる

そんな高畑の理想は、やはりナギ・スプリングフィールドだった

破天荒という言葉がピッタリなほど目茶苦茶な人間だったが、何故か彼の周りには多くの仲間や同志が集まった

敵も多かったが味方も多かったナギの生き方や人生に、高畑は今も憧れている

そして同時に仲間や師匠を見殺しにして逃げるしか出来なかった自分を、今も許す事が出来ないでいた


そんな高畑の苦悩と悩みは解決しないまま今も時が過ぎていく事になる




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