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平和な日常~冬~

この日の夕食はいつもに増して和やかな雰囲気であった。

元々は穂乃香が横島に会いに来たのでよかったら夕食でもと気軽に誘っただけなのだが、例によって賑やかになるのは現状の木乃香の注目度を象徴するような展開なのかもしれない。


「学園長先生も嬉しそうですね」

日頃から賑やかな食事に慣れてる横島や少女達はともかくとして、今夜特に印象的だったのは珍しく表情豊かな近右衛門の存在であった。

学生達の前では常に飄々とした態度を示している近右衛門が、穂乃香や木乃香の話題で周りの少女達に突っ込まれては照れたり困ったりする姿は今までにない姿である。

娘や孫と一緒のひと時が嬉しいのを隠せない様子の近右衛門に、彼もまた人の子なのだと痛感する。


「責任ある立場ってやつは大変なんだろうよ」

夕方の穂乃香の話に関連して超が二十年前の穂乃香や近右衛門の活躍を語り出すと、少女達は盛り上がり二人は流石に少し恥ずかしそうにしていた。

今回横島は夕映やのどかと大人しくしていてゆっくりと晩酌しながら食事をしているが、夕映ものどかも親友の幸せそうな姿に本当に嬉しそうである。


「今の麻帆良学園あるのは学園長先生と穂乃香サンの努力の賜物ネ。 二人が居なければ今頃はつまらない普通の学校になって廃れていてもおかしくないヨ。 学園長先生はきっと将来銅像になるネ」

やはり年齢を疑いたくなるほどに二十年前の一件にも詳しい超はあまり表沙汰になってない近右衛門の苦労や表の功績まで詳しく知っており克明に語っていくが、それは関係者や対立相手との粘り強い交渉やぎりぎりの駆け引きの連続だった。

聞く者を引き込むような口調で語る超の話は本当に面白く、まるで大河ドラマのワンシーンのように多少脚色しながらも近右衛門や穂乃香の活躍を語っていく。


「超さんノリノリですね」

「学園長先生をイジれる機会を楽しんでるな」

この日の主役である穂乃香とその父近右衛門を讃えるように超はその場を盛り上げるが、実は超本人は滅多にない近右衛門をイジれる機会を楽しんでるのは明らかだった。

話自体はいい話であり少女達の為になる話でもあるが、そんないい話をしつつ楽しむ超に横島や夕映達は少し苦笑いを浮かべている。

まあ夕映とのどかなどは横島も似たような性格であり、まるで他人事のようにつぶやく横島も同類ではと考えているが。

良くも悪くも近右衛門を敬いも媚びもしないのは超と横島に共通しており、近右衛門でイジって遊ぶのは麻帆良といえど他にはエヴァくらいしかいないだろう。

今回横島は大人しいが代わりに何故か超が少しハメを外していた。


「どうぞうって、おまいりやつだよね。 おっきいどうぞうてれびでみたよ!」

そして最終的に近右衛門にトドメを刺したのは、銅像と聞き先日偶然テレビで見た巨大な大仏様を思い出したタマモの何気ない一言である。

その一言に思わず巨大な近右衛門の銅像を拝む学生達を想像してしまった一同は、穂乃香を含めてみんなが爆笑してしまったのだ。

タマモは何が面白いのか分からずキョトンとしているが、流石の超鈴音もこれには参ったと言わんばかりであった。


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