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平和な日常~冬~

その日の夕食は店を早めに閉めて、穂乃香達と一緒にゆっくり夕食にすることになった。

メンバーは木乃香達とあやか達は元より、美砂達やまき絵達や超一味などの2-Aの大半と近右衛門・高畑に刀子までも呼ばれている。

結果的に例のごとくパーティーのような流れになっていくが、流石に慣れて来たのか突っ込む者も居ないし驚く者も居ない。


「へ~、麻帆良祭が金稼ぎのためだったとはね」

店を閉めた後は料理を作るだけだったが横島が予定していた人数を軽く越えたので、横島は急遽明日菜と一緒に近くのスーパーに買い出しに向かっていた。

明日菜は自分の頭を整理するように先程穂乃香から聞いた話を横島にするが、横島はあまり驚くこともなく聞いている。


「なんかお金について考えちゃうんです」

麻帆良祭が財政的な問題から拡大したと聞いた明日菜は、それを自分の現状と重ねて少し悩み始めたらしい。

お金と学業の微妙な問題は学園だけではなく誰でもあることだし、それは明日菜にとってリアルな現実だった。

先日バイトの件で高畑や近右衛門と話した件もまだ保留のままであり、穂乃香の何気ない話はいろいろ考えさせられるようだ。


「人は金に縛られて生きるようなもんだからな。 俺はそういうの好きじゃないけど」

たかがお金されどお金とまでは言わないが、現実的には人はお金に縛られて生きてることが当然だが横島はそんな現実が好きではない。

それは貧乏だった頃の自身の苦しい日々の影響でもあるが、自分の真逆の令子ですらお金に縛られていたように横島には思えた。


「本当に学園長先生や高畑先生に甘えていいのか分からないんです」

お金に縛られたくないと語る横島に、明日菜は横島らしいなと感じる。

人は横島をお人よしだと言うが本来の横島は気まぐれで、誰かに縛られたり責任とか面倒なことが好きじゃないのを明日菜は知っているのだ。

そしてお金に縛られたくないと語る横島の気持ちは明日菜も多少共感する部分がある。

そもそも高畑や近右衛門には明日菜を縛るつもりがないのは明日菜本人も理解してるが、それでもなお二人の優しさや配慮が少し重く感じることは二人には決して言えないことだった。

自分はワガママな人間なのかと悩む明日菜が、そんな本心を明かせるのはいつの間にか横島だけになっている。

あやかや木乃香達には理解出来ない可能性があるし、特に木乃香には彼女の祖父の優しさや配慮が少し重く感じるとは口が裂けても言えないだろう。


「学園長先生達は明日菜ちゃんに幸せになってほしいだけだからなぁ。 正直お金に関しても返って来なくても君が幸せならいいって考えてると思う。 ただ受け取る側は悩むよな」

隠すことなく悩む表情を浮かべる明日菜に横島は、近右衛門達の本音を語りつつも明日菜の気持ちも最もだと告げる。

自身の学生時代を思い出す横島は中学生にしてはしっかりしてるなと明日菜に感心するが、ただそれでも明日菜の気持ちは痛いほど感じてしまう。


「一つだけ確かなことは学園長先生も高畑先生も、本当の肉親と同じくらい明日菜ちゃんのこと考えてるよ。 そこは受け止めてあげるべきだとは思う。 そもそも血が繋がる肉親が居れば幸せになれる訳じゃないしな」

悩む明日菜に横島はお金の問題は一端置いておいて、近右衛門や高畑の気持ちを受け止めることから考えてはとアドバイスをする。

その流れで横島は血が繋がる肉親でも上手くいかないことはあると語り、昔聞いた話として息子を復讐の道具として育てたダメ親父の話を、霊能の部分を別の職業に置き換え少し面白おかしく語って聞かせた。


「もう~、本当にそんな人いるんですか!?」

そして話は復讐が失敗して父親が息子を捨てて逃げたところまで進むと、明日菜は話がネタか創作かと思ったらしく笑いながらも横島に抗議する。


「まあ聞いた話だけど、復讐の道具にしたことと親父が逃げたのは本当だよ。 俺がその息子に会って聞いた話だからな」

あまりに酷い父親の話に明日菜の表情が和らいだところで、横島はこれは極端な例だけどと語りその話を終えていた。

明日菜は少し何かをごまかされた気がしないでもないが、それでも高畑や近右衛門の気持ちを考えるべきだと理解し落ち着いたようである。



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