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その一

 
  竜神様の携帯ライフ


時は199×年、ここの世界は少しだけ他の世界より科学の進歩が早かった

具体的には携帯電話と言う物の開発と普及が、15年以上早い世界の物語


この世界では、なんと妙神山にも携帯電話のアンテナが設置されている

新しい物やハイテクが大好きな猿の老師が、人界に圧力をかけて設置させた物だった


最初は呆れ自分には関係無いと関わらなかった小竜姫だったが、パソコンに携帯にと毎日何時間も夢中になる老師を見て少し興味が出ていた


そんなある日のこと、買い物の為に街に行った小竜姫はとうとう携帯電話を買ってしまう

老師に見つからないように、妙神山の自室に入りコソコソと携帯電話の説明書と睨めっこする小竜姫だが、基本的に一般知識の無い彼女には理解不能の言葉ばかりであった


「『でんげん』とは何でしょう?」

老師が普段使っているのをまねて携帯を触るが、一向に動かない


「不親切な説明書ですね…。 これじゃ、わからないじゃないですか!」

頬を膨らまし愚痴をこぼす小竜姫だが、普通の人は必ずわかると言っていい電源すら知らない人を想定してないのは仕方ないだろう


「老師やヒャクメに聞けばバカにされますし……」

普段は毎日パソコンや携帯で遊んでばかりだと老師やヒャクメに注意している小竜姫

さすがに携帯が欲しくて買ったなどとは恥ずかしくて言えなかった


その日小竜姫は徹夜して携帯と説明書と格闘するが、電源すら入れられずに朝を迎えてしまう



(仕方ありませんね…)

小竜姫は恥を忍んで誰かに携帯電話の使い方を聞こうと考えたが、聞く相手が問題だった

老師やヒャクメに聞けばバカにされることは確実なのだ

結局小竜姫は買った店に行って、携帯電話の使い方を一から説明を受けていく



それから一ヶ月…

ようやく小竜姫も携帯の使い方を覚えていた


ちなみに、老師とヒャクメは小竜姫が携帯を買ったのはとっくに気が付いているのだが…

携帯を買ったのを隠す小竜姫が面白いため、気が付かないふりをして小竜姫の様子を観察していた



そして小竜姫が携帯をいじりだしてしばらくしたある日

一通のメールが小竜姫の元に届く

《僕16才の高校生です! よかったらメル友になりませんか!》

携帯を買ったはいいがメールの相手も居なかった小竜姫は、初めて貰ったメールに喜んでしまう


「初めてメールが来ました~! こんなに嬉しいとは思いませんでした」

感動する小竜姫は、喜んでそのメールに返信する


《私はシャオと言います。 20才の学生です》

さすがに神族だとも言えない小竜姫はサラっと嘘を書くが、これは仕方ないと自分に言い訳しつつ見知らぬ高校生とのメールをしていくことになる


そんな小竜姫の相手だが、名前を高島と名乗っている

今年高校に入学して一人暮らしを始めたばかりだと言うことであった



そう……

偶然小竜姫とメールを始めた相手こそ、高校に入学したばかりの横島忠夫である


携帯電話と言う便利なアイテムの普及が、横島の運命をも変えていた


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