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新しい生活

それから数日後、魔鈴は一人で厄珍堂を訪れていた


「いらっしゃい。 魔鈴ちゃん相変わらず美人アルナ~」

「ありがとうございます。 今日は除霊道具を一式欲しいのですが…」

スケベそうな厄珍の視線と言葉を笑顔でかわした魔鈴は、さっそく用件を伝える


「この前の神通棍はもう限界アルか?」

「いえ、今回は私が使うんじゃないんです。 知り合いがGS試験を受けるので、基本的な除霊方法を教えようかと」

魔鈴が事情を説明すると、厄珍は最高級の除霊道具と見習いの練習用の除霊道具を持って来た


「こっちが最高級品ネ。 それでこっちが見習いの練習用の道具アルヨ。 そんなに壊れる物じゃないアルが、たまに壊す奴が居るアル。 見習い用はサービスするから、また魔法薬を卸して欲しいネ」

商売の話になると少し真面目な表情になり説明をする厄珍

どうやら魔鈴の魔法薬の一部を卸してもらってるようである


「ありがとうございます。 危険の無い魔法薬で良ければ構いませんよ。 それとお願いしていた魔法関係の書物なんですが…」

魔法薬を卸して貰えると知り笑顔を見せる厄珍だったが、魔鈴の話が魔法関係の書物の話になると表情が冴えない


「探してはいるアルが… 正直、難しいネ。 日本には中世ヨーロッパの魔法関係の書物は入って来てないアル。 まして魔女狩りの影響で現存する魔法関係の書物はヨーロッパでも少ないアルヨ」

「そうですか… もし見つかればで構いませんのでお願いします」

魔鈴は代金を払い品物を受け取ると厄珍の店を後にした


(やはり日本で魔法関係の書物を探すのは難しいのですね…)

帰り道を歩く魔鈴は、予想通りとはいえ新しい魔法関係の書物どころか、手掛かりすらも掴めない現状にため息をはく

魔法関係の書物は以前から研究のため集めていた魔鈴だったが、最近は以前は集めなかった白魔法以外の書物を探していたのだが、ほとんど成果が無かった


その理由としては、やはり中世ヨーロッパでの魔女狩りが原因である

魔女狩りの際、貴重な魔法関係の書物がほとんど処分されていた

しかし人を助ける白魔法関係はいくらか資料や書物が残っていたので魔鈴でも集める事が出来たが

それ以外の黒魔法などはカトリックから見れば魔に近いため、ほとんど資料や書物が見つからない


(魂の転生などの魔法は夢のまた夢ですね……)

魔鈴が新しい魔法関係の書物を探し初めた理由は、もちろんルシオラの問題だった


(子供への転生などといい加減な事を…)

いい加減な話を持ち出した令子に苛立ちを隠せない魔鈴

横島には決して言えない事だが、ルシオラの子供への転生は簡単ではない

いや、現時点では不可能と言ってもよかった


欠けた魂を横島を親とすることで補うと言っていたが、それをどうやってやるのか魔法を使える魔鈴ですら全く思い付かない


(魂を扱えるのは最上級神魔だけ。 その最上級神魔ですら欠けた魂を補えるかわからないのに…)

まるで夢物語のような希望のカケラに魔鈴は頭を悩ませる

横島にとって自分の魔法が希望のカケラなのは魔鈴も自覚していたからこそ、人知れず悩み続けていた


(私は諦めません。 必ず方法を見つけてみせます)

あまりに絶望的な現状にも関わらず、魔鈴は固い決意を胸に帰っていく


そんな彼女の戦いは始まったばかりである

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