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新しき絆

二人は笑顔で、一見和やかな会話に聞こえる

第三者が居ればみんなそう思うだろう


しかし、真実はお互いに相手を探りながら騙し合いをしている

横島にとって、卒業前の最大の山場かもしれない


美智恵は笑顔で横島の話を聞いていた

(……話し方は特に不審な感じは無いのよね。 元々明るくて前向きな人間だし… 年齢的に将来を考えるのは当然だし…)

美智恵は横島の言葉を頭の中でリピートしながら考えている

(でも、なんか引っかかるのよね…)

美智恵は理屈ではないのだが、何か引っかかるモノを感じていた


「もし良かったら、Gメンに来ない? Gメンならたくさんの事が学べるわ。 それにあなたの将来にもプラスになると思うしね」

美智恵は笑顔で誘うが、これには2つの意図がある


一つは令子と横島の関係改善の為に、横島を手元で教育しようと言うもの

才能もあり、経験も積んで来た横島だが、圧倒的に足りないのは知識だ

逆に言えば知識さえつければ、令子よりも優秀なGSになる

今の関係を変えて二人の仲を進ませるには、横島も令子にふさわしいように変わる必要があると思っているのだ


もう一つの意図は、自分や令子をどう思ってるのかを探る為である…

タマモの保護の件は口にもしない

わざわざ会いに来たのに、事後報告もないのは不自然に感じていた



対して横島は…


(いろいろな意味があるんだろうな…)

なんとなく、美智恵の意図を感じ取ってている

美智恵は無駄な事はしない人間だ

親しい間でもないのに、わざわざ会いに来て話をするのは、令子に聞かせたくない話だろう


美智恵が影で動くのは、自分か令子の為だけだ


横島は美智恵にやはり隠された意図があると確信する


「Gメンは嫌ですね~ 西条が居ますから! あいつの下で働くくらいなら、GSなんて辞めますよ」

横島は西条を思い出して本当に嫌そうな顔で断った


これは本心である

西条や美智恵の下で働くなんて、絶対に嫌なのだ


「そう……、残念ね……」

美智恵にとっては予想通りの言葉


だが一つ確信を深める

(あなたにとって、私や令子は心を許せる相手では無いのね…)


「わかったわ。 なんかあれば相談して頂戴ね。 令子じゃあ、相談相手にもならないでしょうしね」

美智恵は残念そうに横島に話をする


「はい、わざわざありがとうございます。 俺は焦らず考えたいんです」

横島がそう話して頭を下げて、二人の静かなる対決は終わりを告げた



美智恵は帰り道、車の中で考え込んでいた

「最後に令子じゃ相談相手にならないと言った時、彼は否定しなかった… 理由は二つ。 本当にそう思ってるか… 私と話すのが嫌だったか… おそらく両方かな……」

美智恵の表情は先ほどまでとは全く違い、険しく厳しい表情だ


美智恵の勘は悪い方に当たってしまった


魔鈴の件もタマモの件も相談も報告も無い

最低でタマモの件は報告があって当然である


それなのに彼は最後まで、当たり障りの無い話をしていた


「予想よりずっと状況が悪いわね… なんで令子はここまで放置したの? 未だに気が付いてないなんて…」

美智恵には現状の令子と横島の関係が、おぼろげだが見えていた


だが、一番重要な原因が見えて無い

あの戦いで横島が無くした一番大切な彼女の存在を…


美智恵にとって、魔族は長年の敵

娘の令子の為ならば、その命は犠牲にして違和感など無いのだろう


まさか横島があれから一年以上、周りを偽って彼女の為に生きているなど、美智恵には思いもよらない


価値観の違い

命の価値の考え方


どちらかと言えば、美智恵が普通なのだろう

魔族の命と人間の命を同じと考える横島が特別なのだ


従って、美智恵は横島の本心に気が付くのは無理なのである


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