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平和な日常~冬~

「こんばんは~」

その後横島は夜七時前に店を閉めて、木乃香と一緒に新堂の店に出向いていた。

共同でスイーツを作るにしても、まだ具体的には何も決まってなく一から話し合わねばならない。

昨日は新堂から出向いたので、今日は横島達から出向いていたのだ。

時間はちょうど閉店時間に合わせるように来たので、店内では数人の従業員が閉店作業をしている。


「いらっしゃい。 うちのスタッフを紹介するわね」

横島達が店に入ると店内のスタッフに僅かにピリッとした緊張感が出るが、別に否定的な空気ではなく興味津々な様子に近い。

そのまま新堂の店のスタッフを紹介されるが、パティシエの年齢は二十代から三十代前半の人が三人ほどで今日休みの人が他に一人居るという。

男女比率もパティシエでは半々で、他に販売員が居るがこちらは女性のみとの人員だった。


「さっそく試食してみましょうか」

スタッフ紹介に続き横島達も簡単な自己紹介をするが、話もそこそこにこの日の予定である両店のスイーツの試食をすることになる。

これに関しては昨日のうちに話したことであり、最初に横島と新堂の提供してるスイーツを食べ比べしてみようということになっていたのだ。


「実を言うと、うちの店では時々他店の商品の試食会をしてるの」

そんな新堂の店は完全な持ち帰り専門のスイーツショップなのでテーブル等はなく厨房で店のパティシエ達と一緒に簡単な試食会になるが、他店のスイーツの試食会自体は時々やってるらしく慣れてる様子だった。


「綺麗やわ~」

「こうして見ると、やっぱ見た目の違いが大きいな」

厨房の作業用のテーブルに試食用として横島のスイーツと新堂のスイーツが一緒に並べられるが、一見して違うのは見た目の華やかさであろう。

横島のスイーツも決して見た目を疎かにしてる訳ではないが、比べる相手が新堂だとどうしても華やかさに欠けるものがある。

まあこの辺りは客層や基本コンセントの違いがあるので一概に勝ち負けを決めれる訳ではないが、木乃香と横島は新堂の女性ならではのセンスに改めて感心していた。


「味は判断が難しいですね」

「でも値段と素材の質を考えると、やっぱりうちの負けかしら」

一方の味については見た目以上に評価が難しいようで、新堂の店のスタッフ達も何度と試食して個々に意見を述べていく。

店売りの商品の場合は評価に値段や元の素材も考慮に入れねばならず、単純に味で互角だとしても総評では横島が上だというのが新堂側のスタッフの意見である。

これに関して言えば実は横島は以前のように異空間アジトの食材を使えなくなったことで、少し前から味の質を維持するのに結構苦労していた。

スイーツに必要不可欠な果物に関してもブランド物のような有名な物ではなく味本意で選んだり、形が少し悪いなどの規格外の果物を仕入れるなどかなり工夫している。

尤もこの辺りは雪広グループの協力があればこその結果だったが。

ただ新堂の場合は素材に妥協はしないらしく、個々の素材のランクは明らかに横島より上であった。

値段から見ても横島と新堂ではかなり違うので、この素材で味が互角なのは横島の腕前の成果だというのが結論らしい。




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