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平和な日常~冬~

同じ頃の女子中等部2-Aの教室では、木乃香達がクラスメート達と同じパーティーの話をしていた。


「一度は出てみたいけどね」

「でもドレスなんてないしね、流石に制服はちょっと……」

噂のパーティーに一度は出席してみたいと木乃香を少し羨ましそうな美砂と円だが、実は彼女達というか2-Aの生徒は今年のパーティーならば参加が出来る権利があった。

それと言うのも麻帆良祭において総合順位がトップ3に入ったサークルや団体には、無条件でパーティーへの参加権が与えられるからである。

美砂達を始め何人かの少女達は出席しようかと悩んでるらしいが、問題は服装であり木乃香と同じくパーティードレスなんて誰も持ってない。

まあ参加するだけでダンスをしないならば制服でもいいとなってるが、実際のところはパーティードレスとまでは言わなくてもオシャレをしていくのが普通であり制服を着た女の子はあまり見かけない。

結局パーティーに行こうか迷う美砂達だったが、彼女達はまだ自由な立場なので気楽であり木乃香は少し羨ましそうだった。

本音を言えば木乃香も気楽に出席出来るならばそうしたいのだろうが、立場もあるのでそうはいかないのだから。



一方の千鶴は表面上は普段と変わらぬ様子でにこやかだが、内心ではパーティーの件で気が重かった。

実は昨夜両親から連絡があり、パーティーに出席するように再び頼まれていたのだ。

木乃香がパーティーに出ることで関係者が密かに注目を集めてるだろうことは千鶴にも理解出来るが、彼女は魔法と魔法協会を知らないだけに両親の懸念を半ば理解出来てなかった。

表向きの麻帆良はもちろん学園都市としての顔であり、その維持発展に雪広・那波両家が深く関わってるのは理解している。

ただ千鶴からすると両親が何故木乃香のパーティー出席に神経質になるのかが分からない。

一般的に見て木乃香は学園長の孫ではあるが、将来教師になる予定も無ければ麻帆良学園に関わる予定も今のところないのだ。

まあ確かに現状の麻帆良学園の経営権は近右衛門にあり、正式には近右衛門は麻帆良学園の学園長であると同時に麻帆良学園の理事長でもある。

加えて雪広清十郎や那波千鶴子も麻帆良学園の理事の一人であり学園の経営権はこの理事会が持つことになっていて、千鶴は知らないが実は理事会は魔法協会が握ってるなんて裏事情もあった。

しかしここで少し複雑なのは麻帆良学園の経営権は理事会にあるが、麻帆良市を運営するのは学園の関係者や生徒会や地元の有識者からなる運営会議に決定権があることか。

実際学園の表向きな経営権は近衛・雪広・那波の三家が握っているが、表向き麻帆良学園は平和そのものであるし経営も順調そのものである。

木乃香が学園のパーティーに出れば相応に注目を集めても、魔法協会を知らなければさして気にするほどではないと千鶴が思うのも無理はない。


(まさか言えないような訳でもある……、なんてある訳ないわよね)

木乃香の件に対する両親の考えに些か疑問がある千鶴だが、流石にその裏に何か大きな訳があると考えるのは無理があった。

気になることではあるが、千鶴とて那波家の状況や仕事など全て知ってる訳ではない。

両親が近衛家や雪広家に気を使ったのだろうと考えると、自身のパーティー出席は仕方ないかなと思う。



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