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新しい生活

「かおり…」

その表情に父は詳しく聞いていいのか悩んでしまう

詳しく聞いてアドバイスをするのは簡単だが、出来れば自分で乗り越えて欲しい

師匠としての気持ちと父親としての気持ちの両方があるので、本当に複雑な気持ちだった


「何があったかは聞かないでおく。 悩むのは構わないが、修業中は集中しなさい。 集中出来ないなら修業は休むといい」

「はい……」

結局、父は何も聞かなかった

これが霊能に関係無いならば違ったのだろうが、霊能の事では安易な道は示せない

部屋を後にするかおりを見つめる父の表情もまた、苦悩で満ちている



「世界を救ったのは見習いGSと魔族だった… 私が話しても、誰も信じないでしょうね」

かおりもまた父に何も言えなかった

自分がやった事の重大さを考えれば恥ずかしくて言えないのもあるが、自分が話しても父が信じてくれるかわからない


「私は何を見ていたのでしょう。 仏の教えも霊能者の修業も誰より頑張って来たはずなのに……」

親友だと思っていたおキヌの苦悩も理解せずに、自分が正しいと思い込んでいた
 
憧れ尊敬していた令子もまた、ただの人なのだと今更気付かされるなんて…


今までかおりは自分が人より努力して来た事に、プライドを持って生きて来た

だが、今のかおりにはプライドは残されて無い

最も身近な親友の苦しみさえ理解出来なかった自分が、いかに世間知らずだったかかおりは改めて痛感していた



同じ頃、魔理は何をする訳でもなくただぼーっと日々を過ごしている

おキヌやかおりとは春休みになってから会ってなかった

おキヌは相変わらず横島の件で悩んでるのはわかっているし、かおりとはあの問題の後は外で会ってない

正直、今の魔理は霊能に関わるのを避けていた


「迷惑かけた人達に謝りたいけど…」

タイガーやおキヌや横島など迷惑をかけた人達に謝りたいと思う気持ちのある魔理だが、どうやって謝っていいかわからない

横島とおキヌの問題が一向に解決してない現状では、自分が謝ることがまた余計か事になるかと思うと何も出来なかった


「あたし何してんだろ…」

今までGSと言う仕事を甘く見ていたと痛感する魔理は、GSやオカルト業界が遠い世界に感じてしまう

何をどうしていいかわからない魔理は、結局何もしないまま時間だけが過ぎて行く


春休みになりクラスメートと会わ無くなったかおりと魔理の二人は、ようやく自分を見つめ直し始めていた

学校でクラスメートに囲まれているとゆっくり考える事など出来ないが、一人になれる春休みは自分を見つめ直すいい機会になっている


しかし、二人は後悔や苦しみは感じるがそれを越えるモノは何も見えてない

理想と現実の区別も出来なかった若い二人には、あまりに残酷で悲しい現実をどう受け止めていいかわからないようである


そして二人の春休みは特に変化も無いまま、ただ時間だけが過ぎてゆく

本来、相談に乗って支えるべき恋人や親友に何も言えない二人は、孤独の中で悩みさまよう

答えの無い答えを求める二人の苦悩は当分続くことになる


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