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平和な日常~冬~

その日の夕方を過ぎると店に新堂美咲がやって来る。

目的は例のパーティーに関して相談したいと横島が頼んだからなのだが、夕方以降は時間があるらしく新堂から出向いてくれていた。

まだ店内には結構な数の学生が残っているが、横島は木乃香と一緒にさっそく新堂との話を始める。

内容は主に去年や一昨年の様子や歴代の優勝者のスイーツの傾向など、昨年の優勝者の超でも知らないことを中心に尋ねていく。


「平均千個もか」

さて麻帆良最大のクリスマスパーティーは協力企業やOBなどの生徒以外の招待客だけでおよそ二千人あり、その他には木乃香達のような特別枠での出席や一般応募からの生徒が二千人ほど出席するらしい。

会場は麻帆良で最古のホテルである麻帆良ホテルで行われるが、ホテルを学園が一日貸し切りにするためホテル内の複数のパーティールームやレストランなどで様々な催し物が行われるようだった。

まあそこまではいいが、横島達にとって問題だったのは例年のスイーツ部門の優勝者が作るスイーツの数、平均千個にもなることだろう。


「私は出来るだけ店で作った物を運ぶ予定よ。 現地のホテルでも一から作れるけど、スイーツはその方が確実だから」

三連覇した新堂は千五百個は作る予定で考えてるらしいが、彼女は自身の店で可能な限り作った物を現地に運び盛り付けなどをホテルで行うようだった。

これに関して言えば料理大会の他の部門の優勝者は基本的にはホテルで作るが、料理やスイーツは大会優勝者以外にホテル側が用意する分も多いらしく結構大変らしい。


「実は高等部の調理科や大学部の料理系サークル以外からの優勝者は、料理大会の歴代優勝者でも何人も居ないのよ。 だから普通は同じ所属の仲間や教師や師匠が本格的に協力するし、中華や洋食なんかも時間のかかる下ごしらえは事前に調理科の施設や親しい店なんかで行うそうよ」

パーティーの様子や歴代優勝者のやり方などを聞き驚く横島と木乃香だが、千という数自体は体育祭後に大量に作ったので決して不可能な数ではない。

ただパーティー用のスイーツをと考えると木乃香には未知の世界だし、何よりも歴代優勝者はかなり凝った料理やスイーツを出すと聞くと何を作るべきかで悩んでしまう。


「結構厳しいっすね」

「本来は料理大会優勝者にとってこのパーティーはアピールの場なの。 招待客には学園に関わる企業やOBも多いから、上手くいけば一流の店にスカウトされるし中には店を出す融資をしてくれる可能性もあるわ」

出席人数の多さとその規模は横島が考えていたより大きく、歴代優勝者並のスイーツを大量に作るのは横島でも簡単ではない。

まあ横島と木乃香は歴代優勝者のように別にアピールの必要はないのだが、下手な物を作れば木乃香に負けた者や同時優勝の新堂に泥を塗るようなことにもなりかねないのだ。


「もしよかったら一緒にやってみる? 超包子の二人は共同でやるみたいだし、私も少し考えていたのよね。 せっかくの同時優勝なのに普通にやっても面白くないもの」

予想以上の大舞台に悩む木乃香とそんな木乃香の立場や状況を踏まえた対策を考えていく横島だったが、そんな横島ですら驚く提案をしたのはやはり新堂だった。



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