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平和な日常~冬~

麻帆良学園においても関東魔法協会においても近衛家と雪広家と那波家は特別な存在である。

裏と表が密接に絡み合う麻帆良において、この三家は運命共同体であった。

木乃香が自身の力量で出席を勝ち取ったパーティーにおいて、雪広家と那波家の娘が同じクラスの同級生ならば当然一緒に出るべきであり出なくてはならない。

近右衛門や詠春の個人の考えは別にして対外的には学園長の後継者の有力候補であることには変わりなく、その学園を支える雪広・那波両家との将来的な関係を注目する関係者は少なくないのだ。

無論学園の幹部クラスや古参の企業の人間はおおよその事情を知るからいいが、対外的に近衛家と雪広家と那波家の関係に疑問を持たれるのは当然いいことではない。

パフォーマンスと言えばパフォーマンスだが、仮にある程度そう見られても親しい演出は必要なのである。

麻帆良学園の支援企業を中核とした麻帆良派を守るには、対外的に弱みになりそうなことは当然避けたいのが現実だった。


「まあ、一緒に行くくらいなら別にいいっすけど」

正直横島としては現状の麻帆良学園でそこまで細かいことを気にする必要があるのかは些か疑問だが、ただ一つの勢力を守り発展させる苦労は自分には分からないのだろうとも思う。

実のところ横島は千鶴と噂になってるので、その点でも必要なのかも知れないと少し感じる。

近衛家や雪広家との和は乱せないが、孫の自由な人生は守りたいのだろう。

横島を一種のダミーにして、孫に迫る不要な男の風よけにしたいのかもしれないと考えていく。


「元々貴方にも正式な招待状を出す予定があったのよ。 芦コーポレーションのオーナーとしても一度は顔を出して欲しいの」

そんな千鶴に絡む背景をいろいろ推測する横島だったが、千鶴子からは少し予想外の話が飛び出す。


「芦コーポレーションの経営には関わってませんよ。 金は出しましたけど」

「それだけ注目されてるのよ。 まるでITバブルが弾けて落ち着いた頃を狙ったかのように会社を立ち上げて急成長させてるものだから、いろいろ注目されてるわ」

そのまま話題が芦コーポレーションの話に変わると横島は関わりは深くないとは言うが、いろいろと注目を集めてるのは確からしい。

横島本人は相変わらず土偶羅に丸投げしてるのであまり興味がなかったが、株式非公開企業のオーナーは良くも悪くも注目を集めるようだ。

これは完全に偶然だが数年前にはアメリカでITバブルが弾けてしまい、IT業界への過剰な熱が冷めた頃に会社を設立したことも注目を集めてる原因らしい。

横島をよく知る千鶴子や清十郎達はともかくとして、他の協力企業にはしっかり顔見せして欲しいのが本音のようである。


「いろいろややこしいっすね」

「その分纏めて片付けるから千鶴のことお願いね。 芦コーポレーションの方は私と雪広君で根回ししておくわ」

本来は気楽だったはずのクリスマスパーティーでどんどんしがらみが増える現状に横島は流石に困った表情を隠せなかったが、千鶴子は上手くバランスを取り横島にも有益なものとして話を纏めていた。

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