魔法料理魔鈴はすでに年末年始の休みに入っていた

３１日から３日までは休みなのだ


普段は働き者の魔鈴も、正月くらいはゆっくり休みをとったのだ


「魔鈴さんは、帰る実家とかないの？」

ふとタマモは不思議に思い魔鈴に聞いた


「私の両親は私が小さい頃に亡くなりました。 ですから、高校までは施設で育ったんですよ」

魔鈴は優しく微笑んで話した


「そうなんだ… ごめんね」

タマモは少し申し訳なさそうに謝った

聞いてはいけないことを聞いたと後悔していたのだ


「気にしないで下さい。 私は今幸せですから… 横島さんやシロちゃんにタマモちゃん、みんなと一緒ですからね」

魔鈴はタマモに笑って話して、嬉しそうにタマモや横島やシロを見た


魔鈴自身、過去にはいろいろな思いがあった

だが、今は本当に幸せだった…


（そう言えば、俺って魔鈴さんのこと何も知らないな… 世話になってばかりなのに）

横島は初めて知る魔鈴の過去に、心の中で呟いた


アシュタロス戦の後、横島は精神的に毎日ギリギリだった


ルシオラへの想い


美神親子への疑念


そして、自分自身への怒り


誰一人信用出来ない日々で、横島は更に問題を抱えていた


美神令子から離れること


シロとタマモの将来


そして…、ルシオラのこと



横島はふと、この一年を思い返していた…


いつの日だったか、雪之丞がやって来た

今思えば、あいつも心配して来たのだろう


そして、偶然魔鈴を助けた


横島はあの日を思い出して、懐かしくてふと笑みがこぼれていた


「横島？ ニヤニヤしてどうしたの？」

タマモは一人笑みを浮かべている横島に気がついた


「ちょっと、思い出してたんだよ。 深夜に偶然魔鈴さんに会った日をな…」

横島は魔鈴を見てゆっくり話した


「何それ？　横島が襲ったの？」

タマモは首を傾げていた

シロは一瞬疑うような目で横島を見て、魔鈴はあの日だと理解して、懐かしそうに微笑んだ


「人聞きの悪いこと言うなよ！ 逆だよ」

横島はタマモがからかってるのを理解しつつ、反論した


「私はその日、いつものように空き家の除霊をしてました…」

魔鈴はあの日の出来事を、タマモとシロにゆっくりと話をしていった…

タマモとシロは興味津々で聞いていた


「何の問題も無い、簡単な除霊のはずでした。 ところが、そこには魔族が住んでいたんです」

魔鈴の話に魔族が出てくると、二人は驚いていた


「私は除霊は出来ますが、魔族などとの霊的戦闘は苦手なんです。 私は命の危険を悟りました。 その時偶然、横島さんに助けてもらったんですよ」

魔鈴はそう話して、横島を見つめた


あの日から何ヶ月も過ぎたが…

魔鈴は未だにあの日をよく覚えていた


「私はあの日初めて、横島さんの本当の姿を見たんです 本当に素敵でしたよ？」

魔鈴は横島を見つめたまま、微笑んでいた


横島は魔鈴に素敵だと言われて、顔が赤かった


「ふーん… なるほどね…」

タマモは事情を理解してニヤリとした


タマモは理解していたのだ

魔鈴と横島が友達以上恋人未満なのを


「あの日からですよ。私と横島さんが今のように親しくなったのは…」

魔鈴は嬉しそうに話した


あの日の出来事は偶然だった

あの日が無ければ、今の幸せは無いだろと、魔鈴は思っていた


「なるほどね～ 二人の運命の日な訳ね～」

タマモは魔鈴と横島をからかうようにニヤリとしていた


「うっ… 運命って」

横島はまた顔を赤くしていた


「あら…、私は運命を感じましたよ」

魔鈴は本気とも冗談とも見える笑みを浮かべて、横島を見た


「タマモも魔鈴さんも、あんまりからかわんでくれ」

横島は照れたような、困ったような表情で笑ってごまかした