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平和な日常~秋~3

一方伸二の店を再開する日が間近に迫ると、それに合わせるように周りも動き始めていた。

麻帆良カレーの実行委員会もその一つであり、公式提供店の明確化と新規提供店第一弾が正式に発表される。

これに合わせて今までメニューに載せてなかった横島の店でもようやくメニューに載せており、現提供店の各店では店頭に新規提供店の案内のポスターが貼られていた。

現状ではあくまでもテストケースであり広告宣伝費はほとんど掛けれないので、既存の提供店の店内のポスターだけであるが、雪広グループ系ファミレスや超包子での宣伝効果は麻帆良に限定すれば馬鹿に出来たものではない。



そしていよいよ修業最終日になるが、この日も伸二は前日までと同じように仕入れに同行して食材を学び朝から調理指導を受けていた。

明日からは一人で店に立たねばならないとの緊張感から少し固まってる伸二を、横島は最後まで見守るしか出来ない。


「……どうですか?」

「いいっすね。 これならご飯にぶっかけてもいけますよ」

最終的に伸二が悩みに悩み抜いたのは、麻帆良カレーをどうするかだった。

はっきり言えば同じ味で作る事が精一杯の伸二にアレンジは無謀であり、結局は伸二のアイデアを横島が形にすることでようやく完成している。

これに関しては横島も誤算だったとしか言えなく、逆に言えば料理大会で即メニューを考案出来た木乃香が普通ではなかったのだということを横島に改めて感じさせる結果だった。

さてそんな伸二が出したアイデアは、具を大きめにしてご飯にカレーをかけて食べれるようにしたいとのアイデアである。

元々麻帆良カレーはスープ状のカレーなのでご飯にかけて食べるのにはあまり向かないのだが、そこをあえてご飯にかけて気軽に食べれるようにしたいと考えたらしい。

これは食堂という自分の店の特徴から導き出した結果なのだろうが、横島は悪くないアイデアだと思いアレンジに協力していた。


現状の麻帆良カレーは多少気取ったメニューだったので、そこをあえてぶち壊してご飯にかけて庶民的食べれるようにするというアイデアは本来の横島の好みとも言える。

ただこの方法だとカレールーがご飯に浸透してしまうので好き嫌いが分かれる物にもなるが、その分ご飯と混ざることを前提に味を幾分改良したのでバランスはよく食べ応えもあった。

まあどのみち伸二の腕前だと味の質や具の種類では勝負にならないので、丼物や普通のカレーのように気楽に掻き込むように食べれる物にしたのは悪くない考えと言えるだろう。

結果伸二は横島が完成させた宮脇食堂版麻帆良カレーの作り方を残り少ない日数で必死に覚えていたのだ。


「現状だとこれがベストですよ。 尤もこれにチーズを乗せて表面を炙るとか一工夫加えるのもいろいろ可能ですけど、それは店に慣れて来てからにした方がいいと思います」

ようやく目玉となる宮脇食堂版麻帆良カレーを習得しホッとする伸二に、横島は将来的には更なるアレンジが可能だと教えるがそれは当面控えるようにと言う。

実際麻帆良祭でも具やトッピングの多さも売りにしていたのでアレンジしやすいメニューではあるが、現状の伸二の実力では手に余る可能性が高かった。

調理時間や手間から考えると現状のベストの料理が出来たことは確かである。



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