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平和な日常~秋~3

十一月も末に差し掛かるといよいよ伸二の修業も残り僅かになっている。

そんなこの日、夕映とのどかは妹の久美と一緒に伸二の店の開店準備に来ていた。


「それでは始めるです」

一ヶ月近くも閉店したままの店内だが、意外と綺麗であり宮脇兄妹が定期的に掃除をしていたらしい。

しかし掃除が行き届いてない場所もあり、例えば入口の隣にある食品サンプルに関しては若干汚れが目立っている。

他にもなかなか目に付かない場所や厨房だと換気扇なんかが汚れが酷く、三人はそんな店内の清掃に来たようだ。


「二人とも中学生なのに本当に凄いね。 私なんかよりずっとしっかりしてるよ」

店内は主に夕映と久美が厨房はのどかが掃除していくが、マスクをして手慣れた様子で掃除する二人は久美は改めて感心したように見つめている。

高校生の久美にとって夕映達は年も近い後輩なのだが、すでに社会人としても通用しそうなほどしっかりしてる二人にはいつ見ても驚いてしまうらしい。


「いいえ、私なんてとても…… 正直自分でも不思議なんですよ」

「でも中学生でバイトして店を任されるってのも珍しいと思うよ。 天才超鈴音は別格だし」

年上の久美に尊敬の眼差しを向けられるとのどかは恥ずかしそう。

横島は厨房を木乃香に任かせているし、夕映達と明日菜にはフロアを完全に任せている。

夕映達に関しては少し前から飲み物の発注はするし、翌日のスイーツの販売個数の目安まで参考意見として毎日横島に伝えていた。

その流れで開店してからしばらくは異空間アジトの食材を使っていた為に丼勘定だった収支も、秋以降は夕映達が明確な帳簿として記録している。

一応家賃や光熱費は別払いなので関与してないが、他は全部帳簿に記載していた。

ちなみに夕映にその手の知識を授けたのは超鈴音らしい。

赤字じゃないからいいとしか考えないいい加減な横島に痺れを切らして、超に帳簿の書き方や仕入れのノウハウを聞いて勉強したようなのだ。

なお帳簿に関しては最近は明日菜まで書けるようになっており、誰よりも明日菜本人が一番ビックリしているが。

久美はそんな経営の基礎的なノウハウまで教わった影響で夕映達に尊敬の眼差しを向けるが、本人達は自分は何故こんなことまでしてるのだろうと半ば疑問を抱えながらの仕事だった。


「横島さんは人より優れている分、大きな穴が空いてる人なのです」

基本的に細かい作業を主導して始めるのは夕映であり、明日菜とのどかは付き合う形で覚えている。

凄いけどどっか変。

人間としてあるべき何かが抜けているとシミジミ語る夕映だが、久美からするとある意味それは当然で人間ならば誰でも欠点はあると思う。

それを的確に見抜き自発的にサポートしていく夕映達の方が凄いのではとすら思うのだ。

それらは決して難易度が高い仕事ではないが、中学生が何故そこまでするのかも不思議だし出来るのかも不思議である。

ちなみに夕映達の有能ぶりに驚いているのは結構多く、超やあやかなどの友人達はもちろんのこと店の常連や土偶羅ですら驚いてる側だった。

ただ本人達は横島を心配して凝り性の夕映が次々にやってしまうだけなのだが。



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