そんな魔鈴達は部屋の陰の気を中和して次の仕事に行く

その後は２件の依頼を解決したのだが、両方とも悪霊は居なくて浮遊霊が住み着いていただけであった

１件は説得して穏やか成仏させて、もう１件は成仏を拒んだため立ち退きで話を纏めて終わる


結果的に横島達三人が霊能力を使う事は全く無く、掃除と魔鈴が陰気払いの魔法を少し使ったのみであった


「いつもこんな感じなんですかいノー？」

あまりに地味で穏やかな除霊に、タイガーは驚きの連続だったようだ

タイガーもまた以前の横島と同じで、難易度の高い依頼しかほとんど経験が無い

美神事務所と同じく業界トップクラスの実力と知名度のエミの事務所もまた、難易度の高い依頼などが集まるようだ


「ん～、まあ今日は簡単な方だけどな。　でも強い悪霊なんてめったに居ないよ。　被害が酷い依頼とかは美神さんやエミさんみたいな名前の売れた事務所に行くからな」

「ＧＳの除霊の大半は、今日のような仕事ですよ。　エミさんほどの事務所ですと、一般の事務所で解決出来ない依頼など集まるから違うんでしょうが……」

仕事を終えてリラックスした表情で語る横島を補足するように、魔鈴は一般的ＧＳ事務所の説明をしていく


そもそも霊症の大半は、人の生活にあまり影響が出ないようなレベルの霊症がほとんどであった

一般的ＧＳ事務所が扱う依頼は、そんな霊症の確認などから始まる

中には調査専門の事務所なども存在するが、大半は一般的ＧＳ事務所が調査から解決までを纏めて行う

中小の事務所のほとんどは数十万から高くて数百万の依頼がほとんどであり、一千万以上の依頼は一流と呼ばれる事務所に行く

特に決まっている訳ではないが、それがオカルト業界の常識である


「知らなかったですケン…」

魔鈴の話を聞きタイガーは驚いたようにつぶやく

エミもタイガーの指導はしっかりしていたのだが、一人だと満足に除霊も出来ないタイガーにそんな業界の事情までは教えて無かったようだ


「ＧＳは実際に悪霊と戦う力や技術も必要不可欠ですが、霊症を判断する方法や除霊する方法など幅広い知識が要求されます。　タイガーさんもその辺りは今から勉強した方がいいですよ」

説明に続きＧＳに必要な知識などを勉強するようにアドバイスする魔鈴

雪之丞もそうだが、タイガーもまた知識や経験が圧倒的に不足していると感じている


「難しいんですノー」

ＧＳは戦う者だと言うイメージを根本から変えるような魔鈴の除霊に、タイガーは驚きと戸惑いを隠せない

それに考えていた以上にＧＳが繊細で難しい事に、若干落ち込み気味になる


「お前は才能あるんだしさ、頑張れば大丈夫だって！　雪之丞だって今勉強してるんだしな」

「雪之丞さんが！？」

励ます横島の言葉に、タイガーは再び驚いたようである

圧倒的に強い雪之丞が勉強してるなんてイメージが無かったらしい


「当たり前だろ。　そもそも俺は除霊は素人に近い。　戦闘には自信があるが、除霊はある意味別物だしな…　ＧＳになる以上、最低限自分で判断出来る知識は必要なんだよ」

自分が勉強してると驚かれた雪之丞は少し不機嫌そうにするが、当然のように自分の考えを話した

ＧＳを目指す以上は戦う以外も必要なのは百も承知だし、苦手だからと言って逃げるつもりはない

雪之丞は雪之丞なりに将来を考えて生きていた