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平和な日常~秋~3

一方店の再開の目処が付いた伸二は、さっそく更に具体的な店のメニューの修業に入る。

今までの二週間は本当に料理をする上での基礎であり、これからは麻帆良カレーの習得や店のメニューに応じた完成度を更に上げる必要があった。

流石に短期間で母親の味を越えるのは無理だろうが、せめて並以上の味にしなければ全てが無駄になってしまう可能性が高いのたから。


「麻帆良カレーの利点は、作り方がさほど難しくないってとこなんっすよ。 元々麻帆良祭で中学生にも作れるように考えたメニューですから」

覚悟を決めた伸二に横島は麻帆良カレーの基本的な説明をしているが、実は今までの間にも伸二は何度も横島が麻帆良カレーを調理する様子を見ている。

尤も横島の麻帆良カレーも麻帆良祭の時よりは幾分変わっていた。

元々麻帆良カレーは具材をある程度自由に選べるように考えて作っており、麻帆良祭でもそれも人気の理由の一つだった。

ただし麻帆良祭のように大量に売れるならば選択する具材の種類を増やしても問題がなかったが、現状だと横島の店では多い日でも一日せいぜ数十食程度である。

その結果ある程度具材を絞る必要があり、横島は季節や時期によって限定した具材を変えながら販売していた。

ちなみに現在麻帆良で正式なカレーを販売するのは他に雪広グループと超包子と学園運営の複数ある食堂棟だけだが、具材の選択肢が多いのは雪広グループと食堂棟である。

さて少し話が逸れたが麻帆良カレーの作り方自体は意外と応用範囲が広く、カレーのスパイスを雪広グループの普及型にすれば難易度もさほど高くはない。

これが先日のビーフシチューのような難易度だったら伸二ではお手上げだったろうが、麻帆良カレーは元々2ーAの少女達が作れることが前提だったので伸二にはピッタリであった。


「しかしこれの開発者が横島さんだったとは……」

横島は伸二に麻帆良祭当時の話を交えながら調理方法や重要なポイントを教えるが、実は伸二は麻帆良カレーの開発者が横島だと今の話で始めて知ったようだ。

麻帆良カレーに関しても雪広グループに特別に許可をもらって作ってるのだろうと勘違いしていたようである。


「正直全くのオリジナルじゃないですからね。 ちょっと変わっててもカレーはカレーですし」

いい加減横島にも慣れて来た伸二だが、まだ驚くようなことがあったことには本当に不思議そうであった。

まあ横島としては成り行きというか偶然の産物なので、騒ぐほどではないと思っているが。

所詮は麻帆良カレーもカレーの一種類であり、分類的にはスープカレーにも似ている。

味の違いなんかはあるが全く新しい味でない物が何故ここまで騒がれるか、実は横島が一番不思議に思っていた。


「実は私も麻帆良祭の時に食べたんですよね。 立体映像と本格的な料理には本当に驚きましたよ」

少し不思議そうに当時のことを語る横島だが、どうやら伸二は客として食べていたらしく客の立場から自分の意見を語る。

実際麻帆良カレーの現在の成功は必ずしも味だけのおかげではなく、超鈴音の立体映像や店の雰囲気など総合的なインパクトの影響が非常に大きかった。

美味しいだけでもなく楽しいだけでもない。

アトラクションと料理を高いレベルで融合したからこそ、麻帆良カレーは麻帆良の味だと人々に認知されたのかもしれない。



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