最後に横島がプレゼントを渡すと驚きと戸惑いの中、夕映はプレゼントを開けていく。

まず木乃香・のどかハルナは、それぞれが夕映が好きな本を送っていた。

共通の趣味で日頃からよく本について話すだけに一番いいと思ったのだろう。

明日菜からは髪を結ぶリボンのセットであり美砂達三人からは洋服、そしてあやか達三人からはティーセットが贈られた。

美砂達とあやか達は三人で一つだったが美砂達は店の仕事中に着れるような少しオシャレな服だし、あやか達も三人分のティーカップとポットのセットである。


「うわ～、暖かそうなコートだね！」

最後に横島のプレゼントだが、ハニワ兵手作りのコートであった。

落ち着いた色合いで通学にも着ることが出来るようにと考えられたコートだが、実はデザインなんかは横島には無理なのでハニワ兵に丸投げしている。

選んだ理由については、夕映が少し前から通学用のコートを今年は買い替えようかと悩んでいたので選んだようだ。


「皆さん本当にありがとうです」

多くのプレゼントを目の前に、夕映は少し恥ずかしそうに笑顔を見せて頭を下げた。

元々目立たない地味だった夕映は、当然今までこれほど誕生日にプレゼントを貰ったことはないし賑やかだったこともない。

どう反応していいか分からず少し戸惑ってもいたが、夕映以上に嬉しそうなタマモを抱き抱えてあげるとタマモは更にご機嫌な様子になる。


「さあ、冷めないうちに食べよう」

そんな和やかな雰囲気の中でプレゼントのお披露目が終わると、横島は鍋からよく煮込まれたビーフシチューを皿に盛り付けみんなに配っていく。

その際もあまり気取った盛り付けはしておらず、あくまでも気楽に食べれるようにと気を配っている。


「なにこれ！？」

「本当に肉がとろけるんだけど……」

あまり派手なお祝いを望まない夕映の為にごくごく自然に夕食になるが、最初に反応したのは美砂達三人と夏美だった。

表現や比喩ではなく本当にとろけるような柔らかい肉に素材の旨味が凝縮したその味は、一口食べただけでも分かるほど違いがあった。

日頃横島の料理を食べ慣れてる彼女達でさえ驚いたのは、やはり一見すると普通に見える見た目の影響もあるだろう。


「以前作った物と全く違いますね」

「前のも美味しかったんやけど……」

冗談抜きで幸せな味というのはこんな料理なんだろうと誰もが思うが、夕映や木乃香は以前横島が作った市販のルーを使ったビーフシチューとの違いに驚き唖然としている。

無論過去に作った物も美味しかったのだが、今回はそれがまるで別の料理のように感じてしまう。

何よりこのビーフシチューは白い炊きたてのご飯とよく合う味だった。

元のレシピは魔鈴のレシピだが採算を度外視した上に、横島自身が受け継いだ料理の経験や技術と超感覚を駆使して作った料理はオリジナルすら越えている。

まあ横島本人はオリジナルを越えたとは思ってないが。

所詮は借り物の技術と経験だと考える横島としては、オリジナルは特別であり別格だった。

しかし魔鈴本人が作るより幾分ご飯に合うように仕上がった今回のビーフシチューは、紛れもなく横島の味として完成している。