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平和な日常~秋~3

賑やかな店内も日暮れと共に静かになっていく。

帰宅途中にスイーツを買いに来る客や夕食を食べに来る客はいるが、店内でゆっくりする者はあまり居ない。


そんなこの日はいつもより少し早く閉店してからの夕食になるが、美砂達に加えてあやか達も訪れている。

横島と木乃香達はいつものように厨房からフロアに料理を運んで来るが、見た目はいつもの夕食と大差なく特別豪華な訳ではない。

数日かけて作ったビーフシチューを筆頭にフライドチキンやサーモンとマグロのサラダなど、横島がパーティー用に作るには地味な料理が並ぶ。

ただ見る人が見れば分かるほど食材にはこだわっていたが。

本日の主役たる夕映があまり派手なことを望まないので、見た目だけは地味にした料理の数々だった。


「今日は夕映の誕生日やから、ウチと横島さんで作ったケーキや」

そして最後に純白の生クリームと真っ赤な苺のみのシンプルなケーキが運ばれて来ると、いよいよ横島的にはささやかな誕生日の夕食の始まりになる。


「これは……」

一方本日の主役である夕映は横島や木乃香達が運んで来る料理やケーキを見て、すぐに自分の誕生日のためだと気付く。

しかも決して派手ではないが普段の夕食とは桁が違う料理なのも彼女はすぐに気付いてしまう。

木乃香やのどかほど料理に才能を発揮してはいないが、夕映もまた同じように横島の料理を食べて来たのだ。

思えば数日前から横島が何かを煮込んでいたのは夕映も知っていたが、今まで横島の店で誰かの誕生日を祝ったことなどなかったことから、まさか自分の誕生日のためだとは思わなかったのである。


「誕生日おめでとう!」

突然のことにしばし呆然とする夕映にみんなから誕生日を祝う言葉がかけられると、ニコニコと笑顔のタマモが可愛いくラッピングされたプレゼントを持っていく。


「わたしとさよちゃんでつくったんだよ!」

人にプレゼントをすることが何より好きなタマモは、この瞬間を誰よりも楽しみにしており瞳を輝かせていた。


「あ……ありがとうです」

正直予想外の展開に固まっていた夕映だが、タマモのプレゼントを受け取りと嬉しそうなその表情により現実に引き戻される。

人の喜びを自分の喜びとする目の前の少女の気持ちに夕映はどう答えていいか分からない。


「私達からもプレゼントだよ」

そのままタマモに続き木乃香達もプレゼントをするが、夕映が更に驚いたのは美砂達やあやか達からもプレゼントを貰ったことだった。

美砂達は三人で一つのプレゼントだったが、正直夕映は彼女達から貰うとは思ってなかったらしく驚いている。

ただ美砂達とは横島の店が出来て以来いろいろ親しくしてるので、いつの間にかクラスでも親しい部類に入っていた。

今時の中学生らしい美砂達と夕映達は厳密に言えば趣味や価値観が合わないこともよくあるが、美砂達が横島と関わるようになってからは互いにいい刺激を与える関係になってるのは確かだろう。

夕映とすれば木乃香達はプレゼントをくれるかなくらいは考えていたが、自分が思ってた以上にプレゼントを貰って本当に驚いていた。



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