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平和な日常~秋~3

一方この日は土曜日で休日だったため、夕映は木乃香と朝から図書館島へ出掛けていた。

自分の誕生日であることは当然気付いているが、元々馬鹿騒ぎをするタイプではないので普段の週末と変わらぬ様子である。

日頃出入りする中等部の図書室にないような本を図書館島に来ては読むのが夕映の休日の過ごし方の一つであり、この日も開館時間からお昼過ぎまで読書に時間を費やしていく。


「そろそろ違う本も借りてみましょうか?」

「そやな~、図鑑なんかどうや? タマちゃん動物好きやし」

本のページをめくる音やノートに字を書く音が静かに聞こえる読書スペースで本を読みふけっていた夕映と木乃香だが、流石に空腹には勝てずにお昼をだいぶ過ぎた頃になると本を借りて帰ることにする。

基本的に夕映達は図書館島では中等部の図書室にない本を借りるのだが、定期的にタマモに借りてあげてる絵本の類も中等部にはないので図書館島から借りていた。

ちなみに絵本に関してはタマモの好みからハッピーエンドの絵本がほとんどでこの日も二冊ほど選んだが、そろそろ違う種類の本でもどうかと考えた二人は動物の図鑑を一緒に借りることにする。


「おっす、二人とも図書館で勉強か? 偉いな~」

本を借りた二人はそのまま図書館島を後にするが、図書館島と対岸の麻帆良市内を繋ぐ橋の中頃で大学生の集団に声をかけられていた。


「いえ普通に読書をして本を借りて来ただけです。 先輩方は勉強なのですか?」

「俺達は資料探しだよ。 来年の麻帆良祭に出すには年内に計画を決めたいからさ。 なんとしても君達の連覇は阻止しないとな」

夕映達に声をかけて来たのは、大学部でも有名なイベントサークルの主要メンバーである。

彼らは納涼祭の実行委員会の中心メンバーの面々であり夕映や木乃香とは面識があるが、取り分け夕映は納涼祭の会合で何度か顔を合わせて親しくなった人達であった。


「連覇など出来るはずはありませんよ」

「そうは言っても狙ってるんだろ? 麻帆良カフェのマスターはもう確保したって言うじゃないか」

親しげに話し掛けてくる大学生達だったが、麻帆良祭に関しては完全にライバル視されており夕映は少し困ったように答えるが大学生達は甘く見るつもりはないらしい。

実は少なくない大学生のサークルから横島はすでに来年の麻帆良祭に関する協力を頼まれていた。

それは主に飲食関連のサークルだったが、納涼祭の影響からか飲食以外のサークルからも顧問の形で協力して欲しいとの話が来ていたのだ。

ただ横島としてはタマモが来年は自分も木乃香達と一緒にやるんだと張り切っているので全て断っているが。

その過程で横島は2-Aに来年も協力する約束があるからと断っているため、大学部では2-Aが来年も本気でトップを狙って来てると噂になってるらしい。


「明確な目標がないのは確かですよ。 ただ今年の麻帆良祭のようにしたいとはみんな思ってると思うです」

「君達の実力は知ってるからな。 麻帆良祭では手加減はしねえぞ」

夕映と彼らは納涼祭においては仲間と呼べる関係になりつつあったが、同時に麻帆良祭ではライバルとして見られている。

納涼祭を共に成功させた彼らは夕映達2-Aの面々が、必ずしも横島や雪広グループのおかげで麻帆良祭で一位になったとは考えてない。

結局夕映と木乃香は少し話をして彼らとは別れたが、夕映も木乃香も自分達の注目度に苦笑いを浮かべるしか出来なかった。



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