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新しい生活

さて話は魔鈴の店に戻り、一日の営業を終えた魔鈴は軽く夕食を食べた後に横島・雪之丞・タイガーを連れて除霊に来ていた


「一件目はここのマンションの305号室っすね。 被害はほぼ皆無だけど、前に入居していた人の話だと霊症の類の報告が数回ありって、また気のせいですかね?」

依頼書を読んで雪之丞とタイガーに説明する横島だが、いつもながら簡単と言うか除霊が必要かすらわからない仕事である

魔鈴の引き受けるような簡単な依頼には、実際に霊症が無い依頼もあった

特にこの時期の引っ越しシーズンには、少しでも怪しければ確認して欲しいと言う依頼も多く、数回に一回は何も問題が無い依頼が混じっている


「除霊より掃除が上達しそうだな…」

少しつまらなそうに呟く雪之丞だったが、文句は言を言ってる訳ではない

強い相手が居ないと燃えないのは確かだが、こんな簡単な仕事も勉強のうちだと割り切ってるようである


「タイガーさんは、普段はどんな除霊をしてますか?」

「いつもはエミさんの護衛ですケン。 霊体撃滅波を撃つまでの間、テレパスを使って悪霊からエミさんを守っとります」

「基本的に私に来る依頼は、エミさんのような一流のGSには行かない仕事です。 料金も安く簡単な仕事ですが、たまに強力な悪霊も居る場合があります。 一応気をつけて下さいね」

仕事に入る前にタイガーに説明と確認をした魔鈴だったが、相変わらず緊張した様子のタイガーに少し困っていた


(油断はして欲しくないのですが、このメンバーで緊張されても……)

下級なら魔族でも撃退する力を持つ横島と雪之丞が居るにも関わらず、緊張気味のタイガーに魔鈴はどう言葉をかけていいか悩んでいた



そんな魔鈴達が依頼物件に入るが、やはり悪霊どころか霊の気配も無い

前の入居者が神経質過ぎたのだろう


「じゃあ、掃除すっか!」

「ああ…」

悪霊が居ないにも関わらず掃除を始める横島と雪之丞だが、理由は部屋の中の陰の気にある

この部屋の中の陰の気が、他の場所より高いのだ

現状では問題無いレベルだが、このまま悪化すればいずれ本当に悪霊が寄って来る

魔鈴の依頼には、このような物件の予防的仕事も含まれていた

「あの… 何故掃除を…」

そんな中、突然掃除を始めた横島と雪之丞にタイガーは戸惑ってしまう


「これも私の仕事なんです。 部屋の中の霊的環境を整えて、霊症の予防をするんですよ。 この部屋は若干陰の気が強いですから、それを掃除と魔法で中和するんです。 普通のGSが使う陰気払いの札は高いですからね」

魔鈴に笑顔で説明されたタイガーは、横島の見ようみまねで掃除を始める


「ビックリしただろ? これが魔鈴さんの除霊なんだよ。 その気になれば、陰気を完全に消し去ることもできるぞ」

戸惑いながらぎこちなく掃除するタイガーに、横島は面白そうに声をかけた

かつて横島も始めて魔鈴の除霊を見た時は、驚き感動したのだ

今のタイガーの驚きと戸惑いの表情は横島も以前感じたものであり、そんな表情が何故か面白かった


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