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平和な日常~秋~3

「やっぱ、このままじゃ無理か」

そしてその日の夜になると、宮脇兄妹や夕食を食べに来ていた少女達が帰った店には木乃香達四人が残っていた。

横島とさよとタマモを加えた七人は余り物のケーキと飲み物を食べながらとある書類を見ている。


「あの辺りは高等部の学校が多いので飲食店が多いようです。 しかも客層が似た食堂や定食屋も何件かありましたから」

そんな書類を見ながら説明していたのは書類を用意した夕映であり、内容は伸二の店の近隣の飲食店の情報だった。

しかも情報は飲食店の数や伸二の店からの距離だけでなくメニューや値段まで調べており、それを見れば近隣にどんな店があるかよくわかる。

流石に売り上げや客数なんて情報は調べられなかったが、それは夕映とのどかが一週間かけて調べて来た物だった。

現状で伸二も妹の久美もよく頑張っているが、一度落ちた味と評判を覆すのは簡単ではない。

それを見越していた夕映とのどかは伸二が料理を学んだその先を見据えて、一週間かけて自発的に情報を集めて来ていたのだ。


「普通に考えて一度美味しくなかった店にまた行こうと思わないわよね」

書類を見た横島はこのままでは無理だと言い切ってしまい少し重苦しい空気が辺りを支配するが、それは横島のみならず明日菜でも分かることである。

普通に考えて一度美味しくないと感じた客を呼び戻すのは難しい。


「周りにないメニューを出すというのも難しそうですしね」

困ったなといいたげな横島がそのまま考え込む中、この一週間夕映と共に情報を集めていたのどかは他店との差別化出来そうなメニューなどを考えていたが思いつかなかったようだ。

実際木乃香の次に横島に料理を習う機会があるのどかは、伸二が木乃香のように短期間で驚異的に料理の腕前を上げるのは難しいだろうと考えている。

あれは横島の教え方と同時に習う木乃香の習得スピードも普通ではないと間近で見て来たのどかは理解していた。


「難しいですね」

「むずかしい」

その後も一同は悩み打開策を考えるが、それは一緒に話し合いに参加してるさよとタマモも同じだった。

まあ二人は話し合い自体にはあまり役に立ってないが、立派な店の一員であり本人達は真剣だ。

尤もタマモは事情を理解しておらず横島の真似をして腕組みして悩むが、悩んでるの内容はどうすれば横島達の悩みが解決するかである。

どうすれば横島達の仕事が上手くいくか真剣に考えてはいるが、タマモの場合は基本的に横島の店しか知らないので伸二というか一般的な飲食店の苦労は全く理解してない。

まあタマモは年齢を考えれば理解しなくて当然なのだが。


「どうするつもりなのですか?」

少し重苦しくかった空気がさよとタマモの表情で和む横島達だったが、夕映は現状の打開策が横島にはあるのではと疑う。

今までいろいろあった状況を比較的簡単に打開してきただけに横島に期待もしてるのだろうが、横島はそんな夕映の期待に苦笑いしか出ない。


「俺もいろいろ考えてはいるんだけどさ。 完璧なアイデアなんてないって。 まあ宮脇さんの努力次第では方法もあるだろうけどさ」

隣で横島の真似をするように悩むタマモに、横島は思わず笑顔を見せて夕映の疑問に答えるが横島とて完璧なアイデアなどあるはずがない。

正直横島も幾つかアイデアはあるが、それも必ず上手くいくとは限らないし何より伸二の努力だけでなく運も必要だった。

結局この日は横島が考えていたアイデアを夕映達に話しただけで終わることになる。



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