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新しき絆

一番いいのは卒業と同時に辞めることだ

理由も必要無いし、その後も平穏に生活出来る


だが、横島は所詮バイトだ、いつ辞めても問題ないと考えていた


横島があの事件の後、美神の事務所に居たのはシロとタマモのためだ

シロは人狼族の長老に話して、横島と魔鈴が預かることで話がついている

タマモは横島と両親が保護者になっている


最早、横島があの事務所にこだわる意味は無いのだ


それに問題が解決して、不安が少なくなると、嫌悪感や憎しみが増していた


そんな現状では、横島と魔鈴の関係がピートにバレたくらいでは、気にして無かった



横島の考えは一見、問題無いように見える


ただ重要な部分が間違ってる

それは、令子の気持ちと美智恵の考えである


横島はただのバイトだと考えていたが、令子はそうは思ってない

自分でも認めないが、心の底では横島を好きなのだ

そして、横島の全ては自分の物だと本気で思っていた


令子は想像もしてないだろう

横島が自分を嫌っているのを…

まして、居なくなるなど考えたことも無いのだ


そして、もう一人

美智恵は横島を高く評価していた

現在の令子があるのは、横島が居るからだと考えていた


そしてこれからも、あの自分勝手でワガママな娘を支えれるのは、横島しか居ないと考えている


そんな横島の考えの間違いと、美神親子の気持ちは何を生むのか…


この時は誰も知らなかった



その日、横島と魔鈴は一日中大掃除をしていた

魔鈴の家と店の両方の大掃除も終わり、無事に年越しの準備が終わった



一方、令子達の年末は…

おキヌはクリスマスが終わると、氷室家に里帰りしていた


現在美神事務所には、令子とシロとタマモしか居ない

事務所はわずか数日で荒れ果てており、令子はシロとタマモに食事の代わりに、1日1500円を渡してすませていた

自分では料理は全くしなかったのだ


食事に困ったシロとタマモは、毎日夕食を魔鈴にタダで食べさせてもらい、令子からもらった1500円で朝と昼ご飯を食べていた


タマモはともかく、シロは1500円で三食はとても足りなかったのだ
 
 
令子自身は外食やインスタント食品ですませており、完全にだらけていた


そんな年末のある日、美神親子は二人で都内のバーで飲んでいた

「令子… もう少し事務所片付けないとダメよ? もう大人なんだから、最低限は自分でしなさい」

美智恵は呆れ気味に令子に説教を始めた


「わかってるわよ! 全く…、たまに飲みに誘ったかと思えば、小言を言うために誘ったの?」

令子は美智恵の説教に嫌そうな顔で文句を言った


「別に、言いたくて小言を言ってる訳じゃないわよ… あなたがあんまりだから…」

美智恵はため息をついた

自分が居なかった数年で、あまりにワガママで好き勝手な人間になった


仕方なかった理由があるとはいえ、娘の教育に少し後悔していた


「私はもう大人なのよ! どうしようが、私の自由なのよ!」

令子は不機嫌そうに美智恵に言い切った


「令子……、まあいいわ。 ところであなた、横島君と卒業後の話はしたの?」

美智恵は令子の勝手すぎる言い訳に、怒りを感じたが本題に入ることにした


美智恵は今日は令子に説教に来たのではないのだ

横島の卒業後の話の為に来たのだ


「卒業後? 何にも話してないわよ? 私から聞く必要無いし…。 時給も上げないわよ!」

令子は美智恵が横島の時給を上げさせようと、話をしてきたと感じていた


「時給ってあなた… 卒業後も255円で使うつもり? 第一、横島君はあなたの事務所で働くなんて言ってないんでしょ?」

美智恵は驚いていた

令子がまさか今の時給を続けるつもりなのだから…


「アハハッ… 何言ってんのママ? あんなセクハラばっかりで、役に立たないやつが、他で仕事出来る訳ないじゃん!」

令子はあまりのくだらない話に、思わず笑っていた


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