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平和な日常~秋~3

「畳もいいね」

「本当よね、寮には和室なんてないし」

そのまま一時間半ほど過ぎるとちょうどお昼時になり食事にするが、焼き芋はまだ出来てなくまずはご飯と野菜料理を頂くことになる。

場所はおばあちゃんの家だったが、麻帆良には珍しい和室の部屋で遊び疲れた少女達は寛いでいた。

部屋自体も一部屋ではなく三部屋を襖を開けて繋げており、テーブルも複数並べており三十人の人数でも余裕があるほどだった。


「広い家ですね」

「家は昔から地主だったからね。 家に人が集まる機会も多かったんだよ」

家自体は典型的な昔の農家の造りであり、加えて地主だった影響でかなり広いようである。

最近はあまりないらしいが昔は家に人が集まる機会も多かったらしく、テーブルや食器はもちろんのこと寝具までかなりの人数分あるらしい。


「いただきまーす!」

そんなどこか懐かしさを感じるようなおばあちゃんの家で昼食にする一同だったが、メニューは採れたて野菜を中心に天然きのこなどを使った炊き込みご飯・煮物・野菜炒め・天麩羅・サラダ・豚汁と焼き芋を除いても結構な品数だった。

ただ基本的にご飯と豚汁以外は大皿に盛られており、各自好きな物を取って食べるようである。


「あっ、美味しい!」

「なんか懐かしい味って感じ?」

まるで本当に田舎の祖父母の家にでも遊びに来たような感覚の少女達は、それぞれが自由に食べたい物から食べるがそれはどこか懐かしさを感じるような味だった。

もちろんそれぞれの家庭の味とはまた一味違うが、新鮮な野菜を生かした料理は学校や寮の食堂ではなかなか味わえない。


「野菜の味が違いますわね」

「寮の近所でも売ってくれないかしら」

一方庶民の味とは縁遠いあやかと千鶴だが、彼女達は野菜の味の違いに素直に驚いていた。

いかに彼女達が裕福でも、流石に農家で採れたての野菜を食べた経験はないらしい。

まあ彼女達の場合は市販の野菜の中では新鮮でいい物を食べてるのだろうが、それでも流通に乗って売られる以上は時間差があるのが現実なのだ。


「麻帆良だと朝市が一番鮮度がいいよ。 やっぱ地物だしな。 それにここのおばあちゃんの野菜は朝採りだし、品質も安定していいから東京まで持って行けば高いぞ。 多分麻帆良で一番美味い野菜を売ってるよ」

野菜の本来の味に驚くあやかと千鶴に横島がおばあちゃんの野菜は麻帆良で一番だと言い切ると、少女達の視線は一斉におばあちゃんに集まる。

横島の場合は普段の言動は半信半疑で受け取られがちだが、こと料理に関しての言動だけは信頼度が高かった。

超一流だとも言われる横島の料理の腕前を支えていたのが、おばあちゃんの野菜だと知ると感慨深いものがあるようだ。


「おだてても何にも出ないよ」

横島の一言で騒いでいた少女達が静まり返ったが、おばあちゃんは相変わらずの笑顔で軽く受け流す。

しかしおばあちゃんには今までに専属契約の話が何桁もあったのは、横島も知らない事実である。

ただおばあちゃんはそれらの話を全て断り、好きな野菜を好きなだけ作っているが。

ちなみにおばあちゃんは地主で土地持ちなので結構裕福であり、どこか横島と共通する部分があったりする。



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