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平和な日常~秋~3

「いろんな野菜があるわね」

「あっちにはトマトとかキュウリもあるよ」

さて畑に散った少女達だが、麻帆良ではなかなか見られない野菜畑の数々を興味深げに見ていた。

中には虫を見つけてキャーキャー騒ぐ者もいるが、それでも本格的な畑を見れるのは麻帆良では珍しい。

最も麻帆良学園には農業系の学校や学部もあり郊外には学園の実習用の畑もあるが、一般的な中等部の生徒が関わることはないのだ。


「せっかく来たんだし、さつまいもの収穫でもしてみるかい?」

「マジ!?」

「ちょうど収穫時期のやつがあるんだ。 収穫したら焼き芋にして食べようか」

そんな畑で騒ぐ少女におばあちゃんは気を良くしたのか、さつまいもの収穫と焼き芋をやろうと言い出す。

突然の提案に喜ぶ少女達を引き連れ、おばあちゃんはさっそくさつまいもの収穫を始める。


「横島君、一体どういう知り合いなの?」

「麻帆良の朝市に毎日来てる人なんっすよ。 野菜作りの名人って感じで結構有名らしいっすよ。 タマモがよく懐いてて、一度畑に遊びにおいでって誘われてたんです」

一方少女達を引き連れてさつまいも畑に向かうおばあちゃんの後から着いていく大人組だったが、刀子はたまらずどんな知り合いなのか尋ねていた。

他の大人組も興味津々な様子で横島の話を聞くが、思ってた以上に親しくない相手に驚きや呆れの表情が見えている。


「それって社交辞令じゃ……」

「一応昨日の夕方に確認とお願いの電話はしましたよ。 人数は増えましたけど」

横島の答えが予想外だったのか普通は社交辞令だろうと大人組の人々は思ったらしいが、横島もそこまで非常識ではなく一応前日に確認とお願いの電話をしたらしい。

ただおばあちゃんには横島も何度かおすそ分けとして前日余ったスイーツを上げたりしていたので、周りが思うほど親しくない訳ではないようだ。



その後は大人組も混じって芋掘りが行われるが、総じて収穫の楽しさを味わったのは確かだろう。

タマモやココネや鳴滝姉妹なんかは多少苦戦したりもしたが、青々と育っている野菜を自分で収穫する体験は貴重なもので楽しそうである。

それぞれが収穫した芋を比べたりどれが大きいかと予想したりと騒ぎながらではあったが、手が汚れるのも気にせず楽しむ姿は見た目より幼く見えるほどだった。


「うわ~、タマちゃんの収穫したお芋大きいし形もいいね」

「いっしょうけんめいほったんだよ!」

最終的に一番大きく形がいいさつまいもを掘り当てたのはやはりタマモであり、両手で収穫したさつまいもを一生懸命抱える姿は本当に微笑ましいものがある。

そんな秋の空の下での少女達の楽しげな姿に、横島や大人組はホッとした気持ちになったのは言うまでもない。


そして収穫を終えたさつまいもと他にも食べ頃の野菜を幾つか収穫すると、おばあちゃん家の庭で焼き芋と新鮮野菜の料理を楽しむことになる。



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