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平和な日常~秋~3

「もう少し自浄能力があるかと思ったんじゃがのう」

同じ頃近右衛門は数人の魔法協会幹部と夕食を取りつつ現在の魔法世界と地球の世界各国の魔法協会の情勢を分析していたが、参加者の顔色はあまり良くない。

混乱する世界情勢を近右衛門は逐一分析しては対策を講じて来たが情勢は近右衛門の予想以上に悪化しつつあった。


「メルディアナ魔法協会は分裂寸前です。 メガロメセンブリアは基本的にゲートの防衛以外は興味はないようで、メルディアナ側の魔法関係者を対立させて混乱を助長させてます」

フェイト発見の情報以降世界は良くも悪くも混乱し変化しているが、それが一番影響したのは現状ではメルディアナだった。

立派な魔法使いにして長年メルディアナを支えて来たネギの祖父が抜けたばかりの魔法協会では、他の組織や国家よりも混乱に拍車をかけてしまったのだ。

元々メガロメセンブリアの人間達の祖先はヨーロッパの白人であり、現状に至るまでには長く複雑な歴史が根底には存在する。

その結果近親憎悪とまではいかないが、現代でもメガロとヨーロッパの主要国との関係は良くない。

メルディアナではネギの祖父は地元であるイギリスや他の地球側各国魔法協会とのバランスを取り上手くやっていたが、彼が失脚したことにより権力争いが起こりはじめた時にちょうど発覚したのがフェイトの存在である。

幸か不幸かその影響が非常に大きかったと言わざるおえない。

今までにも部分的に説明してきたが、そもそもメガロと地球側魔法協会では考え方から理想までまるで違う。

地球側魔法協会は地球側に住む魔法使いを地球側国家の権力から守ることが主な目的にあるが、メガロ側には正直さほど重要ではなかった。

無論自分達の影響力を保持する為には地球側の魔法使いを守るべきとも考えているが、彼らの立場からするとあくまでも自分達に従うことが前提にある。

ただこれに関しては元々は地球側の宗教や国家に対抗するには、魔法使いは国や地域を越えて力を合わせなければならなかったとの歴史的な必要性が過去にはあったのだ。

ここまで説明するとお分かりだろうがメガロメセンブリア元老院は、元々は魔法使いを救済することが目的だったのである。


「相変わらず連中のやり方がえげつないのう」

少し話が逸れたが秘密結社完全なる世界復活かと騒がれる現状では、メガロにとってメルディアナは魔法世界と地球を繋ぐゲートの価値しか感じてないようだった。

地球側国家の盟主は事実上アメリカ合衆国に移っており、メガロもアメリカとの関係を重要視している。

実はメガロにとってヨーロッパ系の魔法使いの中でも特にイギリス人の魔法使いはプライドが高く扱いにくいとの認識があり、現状でメガロ側はメルディアナの関係者の切り崩し工作をしており同じメルディアナ魔法協会の人間同士が対立してるらしい。

最終的にはメルディアナ魔法協会を掌握するつもりなのだろうが、メガロ側としてはメガロ対メルディアナの構図だけは作りたくないようで同じメルディアナの魔法使い同士を対立させてるようだった。

まあその工作もどちらかと言えば魔法世界の一般人向けであり、近右衛門のような地球側魔法協会上層部が信頼しないのは織り込みずみだったりする。

世界の危機かもしれない時にこんな自浄作用のカケラもないメガロに近右衛門達は呆れた様子だが、それは二十年前から変わらぬ事実であり特に驚きなどなかったようだ。

最早歩み寄る余地すらない現状のまま、この夜も更けてゆく。



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