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平和な日常~秋~3

同じ頃東京にある芦コーポレーションのオフィスでは、ダンボールが至る所に置かれており引っ越しの準備の真っ最中だった。

社長の土偶羅の人型分体を始め社員が慌ただしく引っ越し準備をしている。

実は今回芦コーポレーション社は、本社機能を麻帆良に移す為の移転することになったのだ。

会社設立以来都内で仕事をしていた芦コーポレーションだが、今回麻帆良市内のオフィスビルのワンフロアに空きが出来たことから本社を麻帆良に移さないかとの打診を学園側から受けていた。

以前にも説明したが麻帆良は学園による特別自治が行われてる街であり、地元企業の税金は麻帆良市内に使われることになっている。

そのため麻帆良学園の支援企業は麻帆良に本社機能を置く会社がほとんどだった。

最も麻帆良に会社の本社や支社を置くには学園の許可が必要なので、麻帆良学園の支援企業以外が会社を置くことはほとんどないが。


ただ元々芦コーポレーションは魔法協会に影響力を持ち影ながら支援する目的で土偶羅により作られた会社であり、今回の麻帆良移転は土偶羅にとって渡りに船だった。

実は当初の土偶羅の計画では麻帆良移転はもう少し先になるだろうとの予測だったが、秘密結社完全なる世界の存在の露見や横島が必要以上に目立った影響で早まっている。

まあどのみち会社が急成長している芦コーポレーションは、現在のオフィスはすでに手狭であり近々引っ越しが必要なのでちょうどよかったが。


「社長、予定通りSNSカグヤの一時停止が完了しました。 ただ搬出作業が少々遅れています」

この日はオフィス専門の引っ越し業者に頼んでの引っ越しだったが、サーバーやコンピューターなども多い芦コーポレーションの引っ越しは大変だった。

そもそも会社設立して数ヶ月の会社であり、社員も満足に育ってなければ社内の連携も必ずしも良くはない。

技術者はそれなりに雇っているが、引っ越しや移転作業の経験がある者はいなく細かな失敗や問題がいろいろ出ている。


「遅れてもいいから確実にやるようにしてくれ。 あまり焦らせるなよ」

そんな引っ越し作業の陣頭指揮を取っていたのはもちろん土偶羅だが、実際にはさほど細かい指示は出してない。

秘書として最近雇った女性を通して逐一報告と指示を仰がれるが、基本的には社員達に任せている。

本当は土偶羅が全部指示を出した方が早くて確実なのだが、それでは人が育たないのだ。

新興企業であり社員同士の連携や協力を促すためにも、任せるところは任せてやらせていくのが必要だった。

というか現在の芦コーポレーションで一番重要なのは、いかにして社員を育てるかである。

金や技術が無尽蔵にあると言っても過言ではない土偶羅だが、やはり企業を育てるには使える人材は欲しい。

それがゆくゆくは麻帆良を守り、横島や土偶羅の負担を減らすことに繋がるのだから。

ぶっちゃけ土偶羅ならば全部自分一人でというか、末端の人型分体を増やした方が早いのは早いのだが。

ただ横島と土偶羅は大規模な介入をするつもりはないので、結局人を上手く育て使うしかない。

引っ越し準備の混乱の声が社内に響くのを聞きながら、土偶羅は内心で密かにため息をついていた。


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