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平和な日常~秋~2

さてこの頃のネギと祖父だが、魔法世界に来た時の中立都市国家の街にまだ滞在していた。

魔法世界に来た理由はジャックラカンの庇護を求めて来たのだが、祖父はラカンに会わせる前にネギの躾をしたいと考えており今だにラカンには会わせてない。


(始めからワシが育てるべきじゃったか)

メルディアナを旅立って三ヶ月以上過ぎたが、この期間で明らかになったのはネギの長所と欠点である。

素直で教えたことをすぐに理解する頭の良さは祖父も驚くばかりだったが、それは理論的な思考であり感情面では並の子供と変わらなかった。

天才少年だと周りから言われていたが、当然特化した才能もあれば人並みの才能もある。

その落差が怖いと祖父はシミジミ思う。


(なまじ魔法の実力があるだけに難しいのう)

総合的に見てネギは九歳にしては優秀としか言いようがなかったが、魔法の実力は大人の魔法使い並なのだ。

物の分別が付かない子供に与えていい力ではない。


(一歩間違えれば……)

そして一番問題だったのは、ネギの根幹にあるのが光や希望ではなく闇や絶望だったことだろう。

ネカネが頑張って愛情を注いだ結果、真っすぐいい子に育ったが深層心理までは改善出来なかったのだ。

極論を言えばネギの本心は、行方不明の父と誰も教えてくれない母親を探したいだけなのだろう。

もちろん生まれ育った村の人々を助けたいという想いもあるが、それ以上に犯人を憎む気持ちも大きい。


(何故世界の歪みをこんな子供が一心に背負わなければならないのか)

それは祖父から見てあまりに不憫で仕方ないことだった。

魔法世界の歪みを正そうとした息子夫婦の命を賭けた戦いの結末が、何も知らぬ子供にまで重くのしかかるのだから祖父はやり場のない怒りを感じずにはいられない。



「おじいちゃん、出来たよ!」

そんな考え混む祖父の元に怪我をした犬を抱えたネギがやってくる。

メルディアナを旅立ってから祖父は、ネギに治癒魔法と魔力のコントロールを精力的に教えていたのだ。

治癒魔法は些か才能がなく苦戦しており、魔力のコントロールも大きすぎる魔力の影響で上手くはいかないが治癒魔法は最近成長の兆しが見えている。

怪我をしていた犬を治癒魔法で助けることが出来たと喜ぶネギの姿に、祖父はどうにかネギを人間らしく育てたいと心に誓う。


(絶対に息子の二の舞にだけはさせん)

ナギのように世界を救うなどしなくていいから、普通に幸せになってほしいと祖父は願わずにはいられなかった。

かつて世界の危機の時も助けたはずの魔法世界の人々に追われた時も、豪快に笑っていた息子であるナギの笑顔が祖父は本当に懐かしく感じる。


(ナギよ。 この世界は本当に救う価値があったのか?)

子供らしく元気に走り回るネギを見つめ、祖父は決して口には出せない想いを心の中でつぶやく。

それは家族故に思うのだろう。

助けたはずの人々に裏切られ妻の汚名は晴らせず、息子は人並みの幸せすら危うい。

人生を賭けて戦った息子への世界の仕打ちは、父として祖父は絶対に許せるモノではなかった。



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