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平和な日常~秋~2

十月も下旬に入ると麻帆良の街は秋の気配が深まっていた。

遠くに見える山々の紅葉は一段と進み、冬がすぐ近くまで迫っていると感じてしまう。


「今度はハロウィンか」

この日横島は近所の商店街の人が持って来たチラシを見ながら、なんとも言えない表情をしている。

それは商店街組合主催のハロウィンウィークに協力を要請するチラシだった。

十月の最後の一週間、麻帆良市内の商店街はハロウィンウィークとして安売りやイベントを行うらしい。


「ハロウィンウィークは学園や生徒は関係なく、商店街が行っているイベントです。 元々は明治初期に学園創立時に来た外国人が持ち込んだ習慣らしいのですが、現代では商店街主催のお祭りですね。 他の街で年末年始に福引きなどをする代わりのようなものです」

チラシを見ながらどうすっかと悩む横島に夕映は例によって説明を始めるが、今回は純粋に商店街のイベントである。

お祭り好きな麻帆良の人々は大小様々な祭りやイベントを行うが、商店街主催ではハロウィンウィークが最大のイベントだった。


「断る訳にもいかんしな」

最近何故か忙しくなり始めた現状に横島は少しゆっくりしたいとの考えが頭を過ぎるが、ご近所付き合いは大切だし協力しない訳にはいかない。

何よりいろいろと目立つ横島が今回に限って協力しないと、余計な波風が立つのは考えなくてもわかる。


「近年は郊外に大型店も出来てますし、商店街も必死なのですよ。 ハロウィンウィークは学園の生徒には様々な割引やサービスがありますから」

出来ればあまり手間をかけないで協力したいと考える横島に夕映は引き続き説明していくが、麻帆良市内の商店街も近年は郊外の大型店に押され気味であった。

それでも麻帆良の場合は普通の都市と違い学園自治の都市なので大型店の乱立なんて事態にはなってないが、商店街の人々は主婦や学生に商店街に来て貰えるように様々な努力をしてるらしい。


「まっ、割引するくらいならいいっか」

正直現状の横島の店は木乃香のスイーツの影響でこれ以上の新規の客はあまり必要ないのだが、割引に協力するくらいならば面倒がなくていいかと横島は思う。


「そういえば、今夜の予約客の準備は大丈夫なのですか?」

「ああ、下ごしらえは終わってるよ」

ハロウィンウィークの件も考えねばならないが、やはり横島は忙しく今夜は雪広グループから横島の店で接待したりとの予約が入っている。

夕映はどちらかと言えばそちらを心配していたが、横島は朝から下ごしらえをしたりと準備を終えていたらしい。


「今日の食材はオールフランス産だぞ。 余り物で悪いが店が終わったら食えるから楽しみにしてろよ」

「日本でも本格的なフランス料理を中学生が給仕する店はここだけでしょうね」

今夜の夕食はフランス料理だと笑顔で告げる横島に、夕映は少し複雑そうな表情を浮かべて横島の非常識さを痛感する。

料理には気を使う横島だが、後はやっぱり適当であり給仕を夕映達に任せるからと簡単に告げたのだ。

どうせならば給仕もしっかりした人を頼めばいいのではと夕映は言ったが、横島は前回も大丈夫だったからいいとしか言わない。

夏休みに明日菜が給仕した話は夕映も聞いたが、正直まさか自分がやることになるとは思わなかったらしい。



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