「俺っすか！？」

ポカーンとした表情で驚く横島に、魔鈴とエミはため息をはく


「おたくも大変ね…」

「ええ…」

魔鈴もまた似たような苦労を抱えてる現実に、エミは少し同情してしまう

タイガーならまだ自信が無くても問題無いレベルだが、横島の場合は問題なのだ

その高すぎる能力ゆえに、自覚が無いと様々な揉め事に巻き込まれる事は明らかである


「正直、成果には自信がありません。　しかし、長い目で見れば無駄にはならないと思います。　それでよろしければ、預かりますが…」

ずっと考えていた魔鈴だが、エミの様子を見て預かろうと思ったようだ

自分の価値を理解してない事や自信の無さは、横島にも共通する

ある意味似た部分があるだけに、長い目で見ればタイガーと横島の両方にプラスになると考えていた


「成果は構わないワケ。　私も散々言い聞かせて来たけど成果はほとんど無いもの」

少しだけホッとした表情を浮かべるエミは、とりあえず２～３日預けて様子を見ることを決めて帰って行く


「タイガーもＧＳ試験を受けるのか。　雪之丞と当たらなきゃ勝てると思うけどな～　あいつの能力、対人戦だと反則みたいな効果あるし…」

エミが帰った後、横島は厨房で雑用をしながら考えていたが、普通にやればタイガーなら勝てると思う


「私は良く知らないのですが、そんなに精神的に弱いのですか？」

引き受けたのはいいがタイガーをほとんど知らない魔鈴は、何度か会ってはいるのだがかなり印象が薄い


「う～ん、周りが周りだからな～　最近までは俺よりは強かったんだけど…」

実は横島のタイガーに対するの印象も薄い

個性的過ぎるメンバーが多い中、あまり自己主張もしないタイガーは精神的に弱いとか感じるほどの印象が無いのだった


（最近とはいつでしょうか？　横島さんの自己評価は低すぎますからね…）

最近まで横島より強いと聞いた魔鈴は少し驚くが、元々横島の自己評価がアテにならないので判断に迷ってしまう


その後いつも通り閉店まで店を営業した魔鈴は、閉店後仕事に訪れた雪之丞を交えてタイガーの件を話し合うことになる


「あいつか…　能力は凄いんだがな」

魔鈴にタイガーの事を尋ねられた雪之丞は、微妙な表情をしていた


「最近は俺も少し修行したから勝てるかもしれんが、前は俺なんかじゃ勝てないと思ったけどな～」

「いや、タイガーじゃお前と勝負にならないだろ。　陰念に負けたんだぞ？」

基本的に自分は弱いと思い込んでる横島を、雪之丞は呆れたような表情で見ている


「そういえば、あいつも強かったな～」

かつてのＧＳ試験を思い出ししみじみ陰念を語る横島に、魔鈴と雪之丞はため息をはく

陰念を知らない魔鈴ですら、横島が言うことが違うのは理解していた


「実際どうなのですか？」

「タイガーには能力を生かすだけの精神力や体術が無い。　さっき話に出た陰念って奴も、最初からテレパスを使えばタイガーでも倒せる相手だった。　誰かの指揮下に入ったりチームで戦うならかなりの戦力になるが、一人になれば状況判断すら出来ないだろう」

会う前にタイガーの正式な評価を知りたかった魔鈴が雪之丞に尋ねると、雪之丞の評価は魔鈴を納得させるものだった


「とりあえず、様子を見るしかありませんね…　雪之丞さんは明日はお昼からお願いします」

魔鈴は横島と雪之丞とタイガーが互いに刺激して成長してくれればいいと願っていたが、予想以上に難しいような気がしていた