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平和な日常~秋~2

麻帆良の街が体育祭で盛り上がる頃、ネギ・スプリングフィールドと祖父は魔法世界にやって来ていた。

魔法世界と地球との間を橋渡しするゲートは両世界各地に十一ヶ所存在するが、二人が利用したのは連合でも帝国でもない中立の国が支配するゲートである。

実のところどこのゲートを通っても変わらないのだが、中立のゲートを利用したのは何処の組織や国にも関わらないとの祖父の意志の現れであった。


「うわ~、ここが魔法世界なんだ」

二人が来たのは中立の都市国家が管理するゲートであり、そこは魔法世界では中規模程度の都市である。

ゲートの管理局を出たネギは、生まれて初めて見る魔法世界の光景に目を奪われてしまう。

地球の文化とは違う魔法世界独自の文化から生まれた街は、独自の歴史と発展を遂げている。

空を飛ぶ空中船に地球では見られないような建物の数々は、まだ幼いネギには希望に満ちた光景に見えるのかもしれない。


「ネギや、しばらくはこの街に滞在してこちらの常識を教えるでな。 観光は明日にしよう」

今にも街に走り出しそうなネギは年相応の幼さが見えていた。

祖父はそんなネギに少しホッとしたような表情を見せつつ、とりあえずは今夜泊まる宿を探すことにする。


さて二人が魔法世界に来た目的は、ある人物の元に身を寄せるためであった。

その人物とはジャック・ラカン。

彼はかつての英雄ナギ・スプリングフィールドと互角だったと言われるほどの生ける伝説である。

再び動き出した完全なる世界と魔法世界の国々からネギを守るには他に方法が無かったのだ。

地球側各国の魔法協会からは疎まれ、メガロメセンブリアからは警戒されるネギが安全に暮らせる環境は驚くほど少なかった。

まあ地球側魔法協会の中には密かに受け入れを打診するところも全くない訳では無かったが、打診をして来た魔法協会の目的は将来的なネギの政治利用以外の何物でもなく行くことなど出来るはずがない。

魔法世界においてジャック・ラカンが好きに暮らせる理由は、彼が政治的な野心が全くないこととその人知を越えた力である。

一人で帝国や連合を滅ぼせるとまでは言わないが、本気になれば国が傾くのは紛れもない事実だった。

彼が連合か帝国のどちらかに肩入れすれば世界のバランスが崩れることは確実であり誰も手が出せないのだ。

祖父自身は本音ではあまり好きなタイプではないのだが、ネギを安全で自由に育てるには彼の力を借りるしかない。

これは祖父自身が何処の組織にも今後は関わるつもりがないと言う意志表示の一つでもある。

まあラカンに会いに行く前にネギに魔法世界の常識を教えて、中立の地域を中心に観光するつもりであった。

田舎育ちゆえに狭い世界観しか持たぬネギに一番必要なのは世界と人々を知ることであり、二人はロンドン滞在中もイギリス国内をあちこち観光して歩いたのだ。

何はともあれネギは本来の歴史とは全く違った形で、魔法世界に足を踏み入れていた。



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