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平和な日常~秋~2

スーパー借り物競争は世界樹を中心に一定の区域内で行われていた。

貸し主も借り主も基本的には大会参加者である。

横島達は世界樹前広場に移動して大型の液晶モニターで状況を観戦していた。

実のところ先程横島か木乃香にはボーナスターゲットになって欲しいとの依頼もあったが、両者とも断っている。

ボーナスターゲットに関しては体育祭で活躍した人から無作為に選ばれており参加すると自分の所属にボーナスになるが、捕まるごとに減点されるので木乃香には向かないし横島もこれ以上目立ちたくはなかった。


「木乃香ちゃんのスイーツ明日から売らんとダメだろうな」

「そうですね。 明日は振り替え休日なので皆さん来ると思いますよ」

ゆっくりと借り物競争を観戦している横島達だったが、それほど暇な訳ではない。

木乃香達と相談しながら木乃香の大会スイーツの販売に向けた話をしている。

値段の設定や販売個数は事前に決めておく必要があった。

特に予選に使用した栗などは、一定の質で多く仕入れるには今日中に雪広グループに頼む方が安くて確実なのである。


「ケーキ類は一種類百個くらいで足りるか?」

「全然足りないと思うです。 例年のスイーツ部門の人気商品だと、一日五百個や千個売り上げたとの話もありますから」

「マジかよ」

結局値段はある程度横島に任せられるが問題は販売個数であり、こちらは夕映とのどかが事前に調べてくれたらしい。

例年だと決勝進出者のスイーツは体育祭翌日には何処かのケーキ屋かスイーツ店で販売されるのが通例らしく、人気商品だと一日千個を軽く越えると聞き横島は素直にビビってしまう。


「明日はバイトを増やさないとダメですね」

「そやな~、全員出勤がええかも」

横島と夕映は仕入れや販売個数を話し合う中、木乃香とのどかはバイトの人員について話をしていた。

横島は基本的にバイトの人員には口出ししないが、販売個数を考えると木乃香も厨房に入らなければならないしフロアも二人は最低必要である。

以前鰻を販売した時も混雑したがスイーツは持ち帰り客も多いので来客人数は桁が違うかもしれないのだ。

ちなみに木乃香には料理大会終了後にスイーツの販売契約を結びたいとの話が何件も舞い込んでいたが、木乃香は修行中だから師匠の横島に全て任せると完全に横島に丸投げしていた。

この辺りは夕映の入れ知恵らしいが、中学生の木乃香ではなく横島を出すことで万が一にも木乃香が騙される可能性を消していたらしい。

おかげで今頃は店の電話が鳴りっぱなしだったが。


「あと木乃香ちゃん、今回のスイーツの販売権とか歩合どうする?」

「ウチべつに要らへんよ。 練習の食材や調理機器は横島さんやいいんちょ達のお金やし」

その後も値段や販売個数からバイトの人員など話すことは多いが、横島としては木乃香への報酬も決めねばならなかった。

しかし木乃香は報酬をあまり貰う気がないと言うか、横島やあやかや千鶴などの結構な援助のおかげで勝ったのでそちらに回して欲しいと告げる。


「いや、それとこれはまた別問題だからな。 どうしようか」

基本的にお金に困った経験がない木乃香はお金に対する執着があまりないが、横島の立場からするとだからと言ってタダでいいとは思えない。

まあ木乃香の金銭感覚には横島にも原因の一端はあるが、横島の場合は土偶羅のサポートがあればこそ好き勝手出来ているので同じ訳にはいかないのだ。

何より金銭問題はきちんとしないと後々困るのは木乃香である。

最終的に利益の中からボーナスを出すことにするが、正直木乃香は自分だけの報酬にはあまり乗り気ではなかった。
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