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その一

みんなが死んで以来、絶対に流れなかった… 枯れてしまったとさえ思っていた涙が流れて止まらなかった

木乃香は優しく横島の頭を抱きしめ撫でていた
夕映も横島の背中を優しく撫でていた
まるで泣きじゃくる子供をあやすように……

木乃香の胸には不思議な気持ちが溢れていた
目の前の傷ついた魂を見たら抱きしめていた

夕映も同じ気持ちだった
まだ二十歳前にしか見えないこの人はいったい何を背負い込んでいるのか…
なぜか気になりほっとけなかった


しばらくして
ようやく落ち着いた横島が恥ずかしそうに顔をあげた

「参ったな~ こんな若い女の子に恥ずかしいとこ見せちゃったな~」

横島の恥ずかしそうな照れたような感じに木乃香も夕映も笑顔で話した


「ふふっ… 横島さん、泣きたくなったらいつでも言ってえな。 私の胸貸したげるええ」

「私の胸でもいいですよ。 人は一人では生きて行けませんからね」

二人の優しい気持ちと暖かい言葉に横島は心が暖かくなる

「ありがとう… 二人には大きな借りが出来たな…、もし二人が俺の力を必要になったら言ってくれ。」

横島は本当に嬉しかった
この世界に来てまだ数日だが、こんなに優しい人に会えた
そして彼女達の笑顔を守りたい。
そう思い始めていた…



そしてかつてのように
新しい世界でも横島の周りには人が集まり始めていた…
それは今は亡き、彼の仲間や恋人の願いだったのかもしれない…



それからは
横島は平和な落ち着いた生活をしていた

木乃香や夕映はよく家に来て話をしたりご飯を作ってくれた

刹那とは夜に見回りをして
昼間には剣の稽古をつけたりしていた
横島自身も勘や実戦感覚を鈍らせないためには、刹那との稽古はちょうど良かった


ある日
横島と刹那は家の庭先でいつものように稽古をしていた

キン!キン!キン!キン!キン!キン!キン!キン!

「刹那ちゃんの剣は威力のある技が多い、その分隙が出来やすい。 そこを考えてな」

最初は試合形式だったのだが、神剣の達人小竜姫の剣術を使える横島と刹那では試合にならなかった。
そしていつの間にか、剣術の稽古になっていた

「はい、もう一度行きます!」

刹那は再び横島に挑む!

キン!キン!キン!

横島はそのつど戦い方を変えていた
受け止めて打ち合いをしたかと思えば、動き周りよけて変幻自在に戦ったり

刹那にはいい実戦形式の修行になった


そんな時客が現れた

「こんにちは~ 横島さん、お昼ご飯持ってきたえ~」

現れたのは木乃香だった。
木乃香は庭先から音がするので、玄関ではなく庭先に来たのだった

木乃香と刹那はお互いに見て驚き

「せっちゃんやないの~ なんで横島さんの家にいるん?」

「お嬢様…」

木乃香は嬉しそうに横島と刹那に駆け寄って来た
横島と刹那は剣を止めて刹那は突然現れた木乃香に困っていた…

「木乃香ちゃん、いつもありがとうな。 刹那ちゃんと知り合いか? 刹那ちゃんとは学園長に紹介してもらって、たまに剣の修行をしてるんだよ」

さすがに木乃香の護衛の話はしなかったがうまく話を繋いで話した

「そうやったんか~ うちとせっちゃんは小さい頃からの友達なんよ~ 最近せっちゃんが昔のように話してくれへんようになってしもうたけどな…」

木乃香は話してるうちに寂しそうになった

「お嬢様…私は…」

刹那はうまく言えないようだ

「二人ともまた昔みたいに仲良くしたらいいよ。 刹那ちゃんも木乃香ちゃんもお互い大切な友達だと思ってるみたいだしな」

横島は笑顔で二人を向かい合わせて話して刹那の背中を少し押した

「お嬢様… すいませんでした 私はお嬢様の近くでお守り出来ればそれで満足だったんです」

刹那はゆっくり木乃香に話した
木乃香は刹那の顔を見て

「うちせっちゃんに嫌われたかと思っておったんよ… 嫌いやないなら昔みたいに仲良うしてえな」

木乃香は嬉しかったのか満面の笑顔になって話した

「お嬢様… ありがとうございます。」

刹那の言葉に木乃香は、刹那の手を握って喜んでいた

「良かったな、二人とも…」

横島は言葉少ないが本当に喜んでいた
半妖の刹那と膨大な力を感じる木乃香
二人には試練もあるだろう…
だが自分が影で支えてやればいい…
そう思った


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